食を追求し芸術にまで高めた美食家ドダン(ブノワ・マジメル)と、彼が閃いたメニューを完璧に再現する料理人ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)が厨房でする料理はさながらセッションのように見える。それを>>続きを読む
『希望のかなた』から実に6年ぶりの帰還だが、引退宣言前から何一つ変わっていない。良い意味で肩の力の抜けたやり過ぎない感じ=ヘタウマの精神が随所に見られる。小津的でブレッソン的、つまり足し算よりも引き>>続きを読む
40代半ばになったジェス(ジェニファー・ガーナー)とビル・ウォーカー(エド・ヘルムズ)夫婦はクリスマスの夜を楽しもうとしているが、自分たちの子供たちはすっかりイベントに冷めきっている。このジェネレー>>続きを読む
人間嫌いのアマンダ・サンフォード(ジュリア・ロバーツ)の「そうだ、京都へ行こう」ならぬここではないどこかへのお導きに渋々従う夫クレイ(イーサン・ホーク)と娘ローズ(ファラ・マッケンジー)に息子アーチ>>続きを読む
今年観た映画の中でもさっぱりわけのわからない映画で、草野監督自身が私自身も何を撮っているのかさっぱりわからないまま今作を撮り、撮り終えた後も答えは出ていないと語るくらいだから、観客にはわかるはずがな>>続きを読む
2人が寄り添うビジュアル・イメージに何だかジョン・カサヴェテスとジーナ・ローランズの濃密な関係性を思い出した。マエストロと言えば私はてっきりイタリア映画界の巨匠エンニオ・モリコーネの自伝的物語だと思>>続きを読む
この良い意味でキツネにつままれたような61分間4部作の奇跡のような快楽に身を委ねてしまう。率直に言って大変面白かった。上映後の中島歩さんとのトークショーで聞いた話によれば、もともと4部作の4話目が発>>続きを読む
身体は大丈夫でも脳からダメになる人へという皮肉めいた言葉は極めてギャスパー・ノエらしい。心臓病を抱える映画批評家の夫(ダリオ・アルジェント)と、認知症を患っている元精神科医の妻(フランソワーズ・ルブ>>続きを読む
監督との不倫スキャンダルで全ての⼥優の仕事を失った園⽥梨枝(蓮佛美沙子)が10年ぶりに地元の⽥舎町に戻って来る。理由は地上波テレビの密着ドキュメンタリーの撮影のため。しかし、現場にやってきたのはテレ>>続きを読む
ある冬の夜。17歳のリュカ(ポール・キルシェ)は、寄宿舎からアルプスの麓にある家に突如、連れ戻される。最愛の父親が事故で急死したのだ。今作は2度の交通事故により幕が開く。1度目は奇妙な予兆とも言える>>続きを読む
市子(杉咲花)は、恋人の長谷川義則(若葉竜也)からプロポーズを受けた時、女としての幸せを噛み締めていた。然しプロポーズの翌日に忽然と姿を消してしまう。イントロダクションのインパクトとしてはほとんど完>>続きを読む
廃墟となったかつての哭倉村にやって来た鬼太郎と目玉おやじ。目玉おやじは、70年前にこの村で起こった出来事を想い出し、語り掛ける。血液銀行に勤める水木は当主・時貞の死の弔いを建前にジャーナリストとして>>続きを読む
『チャーリーとチョコレート工場』に登場したウォンカのチョコレート工場誕生秘話を描いた前日譚は、思わず絵本から飛び出して来たようなカラフルな映像とスコアにいきなり圧倒される。ティモシー・シャラメの歌も>>続きを読む
惑星「X」で紛争が勃発したという。「X」は人間の姿に擬態する能力や人間を決して傷つけない固有性を持つため、アメリカ政府は助けを求めてきた難民を惑星難民「X」として受け入れることにした。そして日本もア>>続きを読む
キルギスの村に1人の男が草臥れた様子で帰って来る。息子は大喜びで村へと連れ戻すが、父は村の風景に目をくれようとしない。23年前、ロシアに出稼ぎに行ったきり、行方がわからなかったザールク(アクタン・ア>>続きを読む
思わず絶句する様な内容の映画ながら、出産について極めて考えさせられた。なぜかと言えば今作では人間の生命の誕生がポッドと呼ばれる体外に在る卵で孵化するからである。AIが発達した近未来のニューヨークで暮>>続きを読む
染谷将太と渋川清彦と聞いたら『不気味なものの肌に触れる』を思い出したが、残念ながら2人はニアミスしているが共演場面はなかった。まず絵本『怪物の木こり』というのが子供に読ませてはならない代物で、とにか>>続きを読む
予告編を観た時点で私が観る映画ではないと勝手に線引きしてしまったが、友人知人たちから是非観て欲しい、観ておいて損はないと言われ重い腰を上げたのだが、いやはや普通に面白かった。今回も単なるご当地映画で>>続きを読む
巻き込まれ型サスペンスの帝王としてのリーアム・ニーソンの存在感がここ数作大きく揺らいでいるのは、彼自身の71歳という年齢に負うところも大きい、とここで何度も口を酸っぱくして述べて来た。90年代初頭に>>続きを読む
ウィリアム・フリードキン『エクソシスト』の一風変わったオマージュとなった『ヴァチカンのエクソシスト』との比較では、正直言ってなかなか厳しい面もある。然しながらこちらはウィリアム・フリードキン『エクソ>>続きを読む
まさかここに来て処女作『デュエリスト/決闘者』の世界線に立ち戻るとは思いもしなかったが、時代物とはいえリドリー・スコットによるナポレオンの新解釈は痛烈な風刺が効いている。北野武の『首』の織田信長解釈>>続きを読む
結婚を間近に控えた果歩(河井青葉)と智也(岡本竜汰)を祝う会。誕生パーティも兼ねた旧友たち6人が集うパーティーの席上で、期せずして男の過去の浮気が発覚する。男と女はたどたどしく別れ、それぞれの夜を過>>続きを読む
複雑な過去を背負い、家族や友人たちのしがらみから逃れて来たフリーターの辰巳ユリ(馬場ふみか)がさながら、コーポの管理人のように振る舞う。女性に貢がせて暮らしている女ったらしの中条紘(東出昌大)、女性>>続きを読む
地方の裕福な家庭で育った女子大生真奈美(錫木うり)は、資産家でゲイの潤(矢野聖人)に連れられて歌舞伎町のホストクラブを体験する。2人は互いに同じ渇望を抱えている事を知り、加速度的に惹かれあってゆく。>>続きを読む
先週書いた『アメリ』もそうだが、何だか自分のかつての琴線に触れた懐かしい映画たちが4Kになって帰って来る。そういう世界線にいつの間にかなったかと思うと実に感慨深い。今作は『アメリ』以上に当時の自分自>>続きを読む
裸の老人というか本当に全裸の86歳の老人が性器を露出しながら、誰もいない薄暗い劇場の廊下を彷徨い、舞台に上がる。円形の劇場には静寂だけが流れている。レオス・カラックスのほとんど全ての作品のカメラマン>>続きを読む
戦争で家族を亡くし、半焼けになった小さな居酒屋で1人、孤独に暮らす女(趣里)は一見、小料理屋の名目で実態は男に体を売って暮らしていた。1945年8月15日、日本は全面降伏し、終戦を迎える。しかし国か>>続きを読む
東京フィルメックスの最終日。連日連夜の観劇で流石に疲労困憊の中、最終日に持って来たのは何と212分(3時間32分)のスパルタ・シットで、本当に馬鹿なんじゃないかと思ったがいやはや、これが本当に素晴ら>>続きを読む
新年早々悪天候が予想されるなか、シンガポールから東京を経由しハワイ・ホノルルへ。会社の指示で難しいフライトに臨むトランス機長(ジェラルド・バトラー)は妻に先立たれ、今は離れて暮らす愛娘とホノルルで久>>続きを読む
『君の名前で僕を呼んで』の監督ルカ・グァダニーノが絶賛しているという予告編を観てそりゃそうだと思った。映画のルックも男同士の切ない恋も風光明媚な美しい土地での悲恋など何もかもが『君の名前で僕を呼んで>>続きを読む
私はてっきり今年は『悪は存在しない』が閉会式に観られると思っていたのだが、フタを開けてみれば『GIFT』という聞いたこともない映画がラインナップに並び、かつ石橋英子さんの演奏付きの特別上映ということ>>続きを読む
当時の実年齢とは合っていない豊臣秀吉を演じる北野武の活舌の悪さを観て、幾ら何でも冗談が過ぎると思ったのだが、恐る恐る観ていたら、家康も小林薫で、物語上の重要なトリガーとなる荒木村重を演じるのも遠藤憲>>続きを読む
『昔々、アナトリアで』の象徴的な街だったアナトリアの僻地にある公立学校の美術教師サメットの帰還から物語は始まる。雪の中をスーパー・ロング・ショットの画角で歩き出す彼の足取りはどこか重く、彼のこの街へ>>続きを読む
東京フィルメックスの最前列右寄りで観たのだが、明らかにピント(焦点)が合っておらず、映写環境の不具合だと思い隣の人に話しかけたら、「これが演出らしいです」とのことでしばらく我慢して観ていたのだが、ピ>>続きを読む
『アメリ』を初めて観たのは確か今のような季節だったと思う。あまりにも寒い冬にダッフルコートを着て今は亡き渋谷シネマライズの前に行くと、たくさんの人だかりが出来ていて冬寒の中、何十分も並びようやくチ>>続きを読む
今年4K上映されたジュリオ・クエスティの『殺しを呼ぶ卵【最長版】』にもあるように、しばしば養鶏は不妊と出産のメタファーとして登場する。最近、5000羽に業務を拡張した養鶏場を営む田中家に嫁いだ優子(>>続きを読む