何とも不思議な魅力を持った映画でした。
ひたすら緩慢で、主題らしきものも見えづらく、ご都合主義的な展開もしばしば。
それなのに…。登場人物たちの無計画で、無方向な振る舞いに何故か惹きつけられます。>>続きを読む
【再鑑賞】
山本富士子の初登場シーンが素晴らしい。
艶やかな着物を着た若い女性が、軽やかにタクシーから降りてくる。あたり一面を一瞬にして華やかな空気が包み込む。そのワンショットを見ただけで直前のシー>>続きを読む
冒頭のバーのシーン。
店内の広さ、主人公が座る席の位置、他の客たちの視線の動き、女主人がオーダーを取りに来るタイミング、登場人物たちが店内を移動するときの距離とスピード。
どれも的確で、朴訥な黒人青年>>続きを読む
ベッティーナを演じたヒルデガルト・クネフの面影が何処となくベルトルッチの『暗殺の森』に出てたドミニク・サンダと重なります。
何やら訳ありな陰のある女の存在は、サスペンス映画に奥行きを与えます。
【再鑑賞】
平成日本の学生生活とはかけ離れた絶海の孤島で、巷の流行などとはまるで縁の無さそうな殺伐とした少年少女が、拳銃やら斧やら鎌など物騒な代物を手に、スカートを振り乱しながら血まみれで絶命していく>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
愉快痛快、心躍るとはまさにこのことです。
観ている間、私の口元から微笑みが絶えることはありませんでした。
何よりも目の前のスクリーンが悦びに満ち溢れていることに感動しました。
映画の冒頭、いきなり馬>>続きを読む
「影山祐子」
この主演女優の名前を覚えておくべきかもしれません。
呆然とカラオケを歌う姿や背中を丸めて街角に座り込む姿をカメラの前で晒すこと。その「ただそこにいる」ことの重要性を、おそらく彼女は知>>続きを読む
タイトルが暗示する、多元的な世界を多様なスタイルで、一つの物語にコラージュ的に内包させる語り口は、湯浅政明の『マインド・ゲーム』、細田守の『サマーウォーズ』、新海誠の『君の名は』など、21世紀になって>>続きを読む
【再鑑賞】
殺人鬼が怖いわけでも、怨霊が怖いわけでもなく、そこに充満する風土そのものが恐怖の対象となり得るということを気付かせてくれた作品です。
ただひたすら下品で馬鹿馬鹿しく、安っぽくて技術的な質も低い映画ですが、肝心なところでゴダールの『勝手にしやがれ』と同じことを言っている気がします。つまり、こういうことです。
「とにかくカメラを持って>>続きを読む
田舎から都会のロンドンに出てきたファッションデザイナー志望の女の子が、孤独に苛まれた挙げ句、自分が贔屓にしている60年代の亡霊に取り憑かれるという、何とも踏んだり蹴ったりな物語。
紛れもない21世紀>>続きを読む
【再鑑賞】
映画それ自体はフィクション=作り物だが、そこに映っているものは人々の記憶の中に存在する現実である。
本作は作品自体がそんな考察を我々に提示しています。
映画の中で登場人物たち自身が自ら>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
【再鑑賞】
クリストファー・ドイルの自在なカメラワークが、中国に返還される前の香港の雑多な街を舞台に、刹那的な恋愛ゲームに興じる4人の登場人物たちを見事に切り取っています。
金城武、ブリジット・リン>>続きを読む
冒頭、スケボーを滑らせる少年を捉えた長い移動ショットや黙々と走る東出昌大を捉えたショットに漲る潔さには好感を持ちました。
東出昌大の無表情にはそれなりの魅力が備わっていると思います。
最初に断っておくと、ウェス・アンダーソンの映画には初期の頃から好意を持っていますし、『ライフ・アクアティック』などは2000年代のベスト10に選びたいほど大好きな作品です。
ただ、本作に関しては、こ>>続きを読む
重厚な内装が美しいロングショット。背中の大きく開いた黒いドレスを着たイングリット・カーフェンが、こちらに背を向けて立っている。カメラがゆっくりと彼女に近づいていく。
名手レナート・ベルタによる、この>>続きを読む
【再鑑賞】
図らずも、先日鑑賞した『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』のクローネンバーグと塚本晋也との浅からぬ親和性を感じることになりました。
どちらも肉体の破壊や無機物と有機物の融合などに、特殊な>>続きを読む
カサヴェテスの映画をスクリーンで観る悦び。
中年男3人が年甲斐もなくはしゃぎ、酒を飲んでは同席者に絡んで、ベロベロになってトイレで吐く。思いつきでロンドンに行くと、見境なく女性をナンパし、乱痴気騒ぎ>>続きを読む
【再鑑賞】
ひたすらに美しい、ビクトル・エリセの大傑作。
「生」と「死」が同義語のようにフィルムに脈打ち、あらゆる表情が、あらゆる光が、あらゆる物音が撮られることの悦びに満ちています。
アナとイザ>>続きを読む
スパイものの序章として秀逸だと思いました。
公開当時にリアルタイムで観ていたら、続編を制作してほしいと思ったことでしょう。
サイボーグのように冷徹なスパイに変貌した、このニヒルな雷蔵が、今後どんなミ>>続きを読む
破壊される肉体。
クローネンバーグの「らしさ」全開で安心すらするのですが、「安心」という言葉がこの変態映画作家にとって、必ずしもポジティブな意味を持つものではないのは言うまでもありません。
嵐で公共施設の時計が壊れるという件は、やはりあのタイムスリップ映画の傑作へのオマージュでしょうか。
【再鑑賞】
さすがの溝口健二です。
見慣れた物語を抑制の効いた落ち着いた画面を構築することで、新鮮な感動をもたらしてくれる美しいフィルムに仕立て上げています。
中でも、厨子王が脱走した後、安寿が池に>>続きを読む