シャチ状球体さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

ザ・キッチン(2023年製作の映画)

3.3

新自由主義政策が続いたイギリスの行き着く先は、最新技術が人々の管理に使われて一般的な生活費で賄える住宅が極端に不足するディストピア。

警察のドローンが常に上空を監視してるから地下や天井に覆われた場所
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のら犬(2023年製作の映画)

3.9

邦題は『のら犬』。検索に引っかからないことを目標にしているのかもしれない。

きょうだいのように仲が良い幼馴染のドッグとミラレス。この二人の関係がエルザの登場で徐々に崩れていくわけだけど、そもそも何故
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フラッシュ・ゴードン(1980年製作の映画)

3.5

成功しなかった超大作として今でも話題に上る映画。

突然降ってくる"ひょう"、空を覆う赤紫の雲。特殊効果も役者の演技も本気度200%で、とにかく観客を画面にくぎ付けにさせたいという強い思いが伝わってく
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ナイン・デイズ(2020年製作の映画)

3.4

天国や地獄という概念は非常に排他性の強い人間的なもので、罪だと設定された行為の有無で他者に住む場所を決められるという点で非常に非人道的。

この映画はそんなことをテーマにしていながらかなり趣向を変え、
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デイズ・オブ・サンダー(1990年製作の映画)

2.8

バンドのThe Midnightが同タイトルの楽曲を出していたので知った映画。

『トップガン』と同じく、トム・クルーズのスター性から逆算して脚本を作ったようなファンタジー的世界観が特徴。
才能はある
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

2.9

去年、A24がアート映画を重視する戦略を転換する、みたいなニュースを見た後だと微妙に不安にさせてくる映画。

正直後半まで(というかほぼ全編)のソフィとカラムの二人きりのバカンスは面白味に欠け、特に何
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過去のない男(2002年製作の映画)

3.7

過去のない男(役名もない)が海辺の古小屋で高い家賃を払いながら労働をする。
アキ・カウリスマキの映画は毎回フォーマットがほぼ同じで、全ての作品が主人公の設定が少しずつ異なるアレンジ版のような既視感もと
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FLEE フリー(2021年製作の映画)

4.0

北朝鮮もそうだけど、反体制とみなされた人がいればその家族まで処罰対象になる。独裁政治を維持するための徹底的な弾圧の中、アフガニスタンから
デンマークに脱出したアミンが半生を振り返るドキュメンタリー。
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冬の旅(1985年製作の映画)

4.1

モナが旅先で出会った人々は大体、カメラに目線を合わせて思い出を話す。
それを聞いているのは警察でもあり観客でもある。

映画が始まって最初のシーンでモナが死ぬのは、死を全ての終わりだと思わせないためだ
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アトランティックス(2019年製作の映画)

4.2

親から決められた結婚、支払われない賃金。

セネガルの首都カタールを舞台に、厳しい労働環境と根強く残る家父長制の中で何とか生き延びながら恋愛関係を続けていこうとするエイダとスレイマン。
説明台詞の少な
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マローボーン家の掟(2017年製作の映画)

3.1

まず、伝記調の作風とホラー要素の相性が良くない。
クトゥルフ神話のように人知を超えた存在が田舎町の孤立した人間を支配下に置くわけでもなく、クラシックな家系ホラーに近いので恐怖感や新鮮味は薄い。
しかも
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母の聖戦/市民(2021年製作の映画)

4.5

Netflixの『ざわめき』と似たようなテーマの映画。

実話を基にしているということもあり、序盤からハードな展開が続いてずしりと心に重くのしかかってくる。
ラウラの誘拐に関してのメキシコ麻薬カルテル
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見えざる手のある風景(2023年製作の映画)

3.0

エイリアン(ヴァーヴ)に支配されて全員困窮状態に置かれた地球人……という設定の近未来シュールロマンスコメディ。

特殊な環境下でのクロエとアダムの恋愛模様にそれぞれの親同士のそこそこどうでもいい理由の
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MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年製作の映画)

3.4

1週間無帰宅の超絶超永久超暗黒超粉砕労働の最中に時間がループし、同じ内容の労働が繰り返される……というあまり笑えない映画。労働者の時間が前に進まないことにフィクションとの境界線はないんですね。

労働
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終わらない週末(2023年製作の映画)

4.2

オバマ元大統領夫妻がプロデュースしている映画。

4人家族が仲を深めるために休暇を使って田舎町へバカンスに……という非日常感もあるのか、謎の停電によって何でも疑うジュリア・ロバーツと何でも信じるイーサ
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雪山の絆(2023年製作の映画)

3.8

飛行機が事故を起こすまでのドラマに面白味がないとはいえ、墜落後のサバイバル劇にはかなりの臨場感と絶望感がある。

一行に来ない救助隊、日に日に減っていく生存者、乏しい食料……冬の山岳地帯には雪と岩山し
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Pearl パール(2022年製作の映画)

4.0

前作の『X エックス』はあまり新鮮味がなくて微妙だと思った記憶しかないけど評判が良いので視聴。

たまたま昨日観た『レッド・ロケット』と同じくテキサスが舞台。ここはどの映画でもアメリカの保守思想や格差
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ヨーロッパ横断特急(1966年製作の映画)

3.5

ジャン=ルイ・トランティニャンの映画を少しずつ鑑賞。

タイトルバックも音楽もなくいきなり駅のシーンから始まり、カメラが登場人物を追ってどんどん動く。60年代にこれはかなり画期的だったのではないだろう
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レッド・ロケット(2021年製作の映画)

3.6

『タンジェリン』、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』のショーン・ベイカー監督最新作。
行き場を失ってテキサスの実家に帰ってきた元ポルノ俳優のマイキーが主人公で、同監督の今までの作品と違って反差別的
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ファルコン・レイク(2022年製作の映画)

4.3

思春期と死を結び付ける行為にはそこにルッキズムが介在していることが多いけれど、もちろんこの映画も例外ではない。

淡色のフィルターで山奥の湖や太陽の輝きがより一層強調され、画面に映るキャラクター達が自
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EO イーオー(2022年製作の映画)

3.4

EOから見た人間世界……の割には日常の中でも特殊なケース(殺人や暴動など)ばかり登場し、あまり社会風刺になっていない。

EOが見る夢や空想のシーンは真っ赤なフィルターがかかって平坦なリズムの音楽も流
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1秒先の彼女(2020年製作の映画)

3.5

日本でのリメイク版の前にオリジナルを観ておこうと思って視聴。

確かに、主人公が一介の労働者で特にドラマが起こりそうもないような設定なのは邦画によくあるフォーマット。
シャオチーがどんな行動でも1秒早
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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

3.8

マリオとルイージがちゃんと街中に暮らしてるし、クッパは文字通り大軍勢を率いてるし、ピーチ姫が庇護される存在ではなく主体として描かれている。
それだけでもマリオ世界の映像化としては完璧なのに、ワープ土管
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コララインとボタンの魔女(2009年製作の映画)

3.8

家の中から別世界の自宅に行けて、両親が別人のように変わっているというのは子どもにとって最大級に近い悪夢だ。

ストップモーションアニメで描かれる世界は不気味ながらもキャッチーで、現実世界とは別のルール
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エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に(2015年製作の映画)

2.8

パッと見無理そうな映画だったけど、レビュースコアが高かったので視聴。

1980年代が舞台なので(今もだろうけど……)ホモソーシャルな内輪のノリがキツイ。
『初体験/リッジモント・ハイ』より大胆で直球
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ビッグ・ガン(1972年製作の映画)

3.3

アラン・ドロン主演の比較的テンプレートなリベンジムービー。

全然映画とは関係ないけど、70年代の映画を複数観てて思ったのは、都会でも夜になると道が暗いこと。看板のネオンと店の明かり、輝度の低い街灯、
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イノセント(1975年製作の映画)

4.0

イタリア貴族の堕落を描いている……というか、家同士の取り決めとしての結婚が意味を為さなくなっていく話。

フルチの『ザ・サイキック』が有名なジェニファー・オニールがテレザ役、そして34歳で髄膜炎のため
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遥かなる青い海(1971年製作の映画)

4.2

一応音楽がエンニオ・モリコーネなのに日本語圏の情報が限りなく少ないマイナーなイタリア映画。

文明社会から隔絶されたポリネシアに住むタナイが漂着したアラスカから脱走するところから映画は始まり、モリコー
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レット・ゼム・オール・トーク(2020年製作の映画)

3.2

修行が足りなくて(?)非常に退屈だと思ってしまい、同時に何かを読み取らなければならないという強迫観念に襲われながら観た映画。

日常会話以外のドラマが文字通り何もなくて、掴みどころのなさにまず戸惑う。
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バレリーナ(2023年製作の映画)

3.1

親友・ミニの復讐のためにチョン・ジョンソ演じるミステリアスな主人公のオクジュが敵組織の居城に潜入する……という没個性的なストーリー。
スタイリッシュなアクションは普通に見れるけど、00年代の邦画みたい
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Saltburn(2023年製作の映画)

3.8

大学は基本的にクラス制じゃないから、誰とも話さなくても誰にも気にされない。だけド他の人達は全員友達が出来てるようで、残ったヤバい人だけが話しかけてくれる。この生々しい導入から始まる時点でこの映画はただ>>続きを読む

私をくいとめて(2020年製作の映画)

2.8

綿矢りさ原作、のん主演のヒューマンドラマ。

主人公、黒田みつ子の脳内で行われる会話の相手にAという役名が付いている。これは一人に慣れすぎてコミュニケーションを自己完結できるようになったみつ子の悲哀を
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恋愛の抜けたロマンス(2021年製作の映画)

3.4

一風変わった邦題が内容を的確に言い表している映画。

30歳を前にそれぞれ恋愛関係を解消した2人がたまたま出会って……みたいなよくある話ではあるけど、その前に運命の人を見つけるチャレンジを色々して挫折
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よだかの片想い(2022年製作の映画)

3.6

『わたし達はおとな』、『そばかす』と同じく、メ~テレ制作の (not) HEROINE moviesプロジェクト の1作。
『あのこは貴族』とか『マイ・ブロークン・マリコ』も従来のステレオタイプな女性
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わたし達はおとな(2022年製作の映画)

3.8

『ほつれる』の加藤拓也監督作品。

この監督は等身大のリアルな日常を切り取るのが巧いというか、目的のない会話で時間を進めることに長けている。映画ってどうしても一つ一つの台詞に意味を持たせたりしがちだけ
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グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル(2016年製作の映画)

3.7

グザヴィエ・ドラン監督を追ったドキュメンタリー。

今年映画監督を引退したドラン、この頃にはもう既に撮りたいものは撮り尽くしていた感じもする。
『マイ・マザー』や『私はロランス』にあった痛いほど等身大
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