七色星団

デューン 砂の惑星PART2の七色星団のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.1
前作に引き続き圧倒的な世界観に酔いしれつつ、凄まじい映像と音のデザインに頭の芯まで痺れるジンジン体験。
フランク・ハーバート原作小説の世界観や設定は作り込まれ"過ぎ"ていて、作品を構成するキーワードが難しく取っ付きにくいのも前作と変わらない。
とは言ってもストーリーは
"銀河を統べる皇帝を中心とした惑星間の勢力争いから、罠にはめられ壊滅させられたアトレイデス家の後継者ポールの復讐劇"
であり、実はそんなに難しい話じゃなかったりする。
そこに他所者が土地を奪っていく、という僕らのいる世界でもリアルタイムに行われている"きな臭い"動きを、政治と宗教と軍事を絡めて描いて話がダレないの良い。

それにしても良家のボンボンから重要な役割を担う者へと変貌を遂げ、中盤以降はそこに居るだけで場を掌握するような、でも威圧感とはまた違う存在感を放つポール。
演じるティモシー・シャラメってまだ20代後半でしょ。なんつー役者だよ。

そして強い戦士であり、次第に変わっていくポールへの複雑な想いを抱え、生まれ故郷の行く末にも葛藤する微妙なさじ加減を必要とする難しい役回りを、ゼンデイヤが魅力的に演じてる。
チャニはもう少し活躍するかなと思ってたけど三作目に期待やね。

僕的に一番の推しポイントはレベッカ・ファーガソンの気高さとしたたかさを併せ持つレディ・ジェシカの凛とした美しさよ。
彼女のヴォイスで命令を受けてみたい笑

兎に角この作品、達者な演者ばかりだから、これだけの重厚な画作りに役者陣が全く負けてなくて、どのシーンを切り取っても浮いてる人、一人もいないの良き。

余談だけど、原作者のフランク・ハーバートは
"英雄を信じてはいけない"
とこの作品を通して言いたかった、みたいなの読んだことあるんだけど、確かに本作はそこを描いてるよなぁと。だから三作目ありきの不穏な終わり方したよね。
ということで次作を正座して待つ!

そう言えば鑑賞中に、このシーン見たことあるよなぁと思うことも結構あるんだけど、デューンが似てるんじゃなくて、デューンの原作が多くのクリエイターに影響を与えた結果なんだよね。
だからデューンを元にして、これまで世界中の映像作家達により独自解釈で数々の創作が成され、その歴史の究極の着地点が本作『デューン 砂の惑星 PART2』なのかもなぁ―
なんて映像作品の歴史にも思いを馳せる、そんな感慨深い166分でもあった。

最後に。
観終わって最初に思い出したのは『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』。
現代映画製作技術の粋を集め作られた大作という共通点はあるけど、本編の仕上がりが真反対で面白いなぁと思った。
海を舞台にしてどこまでも華やかな映像と、家族をテーマにウェットな物語をメインにして観客を揺さぶろうとするアバターに対し、砂漠の惑星が舞台のため全編ほぼ黄土色という地味めカラーで、家族の復讐や領地の死守・奪還をメインストーリーとしながら、何故か怒りや哀しみなどの感情に訴えかけてくる演出は抑え目だったとか、対比として興味深いなぁと思った。
改めて比較してみるとアバターって物語の基本骨格はデューンだよね。ジェームズ・キャメロンはデューンを撮りたかったのかな?

ま、取り敢えず映画館に観に行きましょう!
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