本好きなおじぃ

ラーゲリより愛を込めての本好きなおじぃのネタバレレビュー・内容・結末

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

〇年末に出会う泣かされる映画。ラーゲリの過酷な様子は描写の細やかさに驚く

日本に原爆が落ちた直後の1945年8月、元満鉄職員の山本幡男は、満州・ハルビンでロシアからの空襲に遭い、崩れた建物の下敷きに。ハルビンから出るように妻のモジミと4人の子供たちに告げ、日本での再会を誓う。
その後終戦となるも、山本は収容所(ラーゲリ)にて旧ソ連のもと強制労働をさせられることとなる。はじめスベルドロフスクのラーゲリにいたが、帰国(ダモイ)を告げられ帰路に就くつかの間、ハバロフスクの手前にて山本らは降ろされ、無実の罪にて再度別のラーゲリに収容されることになる。
日本に家族を残した山本は、帰るために希望を持つ、ただその一心で、中を深め合おうとしたり、収容所での生活に絶望した仲間たちに希望を持たせたりする。
ある年、日本との手紙のやり取りが許され、山本も妻子の無事を確認できたのだが、山本には病魔の手が迫っていた。
山本の身を案ずる仲間たち。元満鉄時代の上司の原は山本が長くないことを知り、山本を援助しながら遺書を書くことをすすめる。山本も覚悟して書くことにするが、完成しても検査で没収されてしまう。果たして、山本の遺書や想いは日本の家族に届くのか。

太平洋戦争終結から11年余りもの長い期間、日本人兵士が旧ソ連に捕虜として連れていかれ、過酷な環境で強制労働に従事させられた、いわゆるシベリア抑留の中で、環境に抗い希望を願い続けた山本幡男とその周りの仲間と家族の物語である。
主権回復をした時期であっても、収容所での労働を続けさせた旧ソ連。当時の労働の過酷さと厳しい指導の様子はリアルだ。
山からの木の切り出し、鉄道建設のための掘削と石の運搬。
マイナス20度を下回らない冬でも容赦なく与えられるノルマと、失敗や失点したときの営倉入れ。過酷、と言わないでどう表現すればよいか。
被爆や戦争体験と比べ語られることの少ないシベリア抑留だが、国民的役者をキャスティングすることでわからない人にも入り込みやすくしてある。

また、自然すぎて気づかなかったが、二宮和也演じる山本役は、とてもロシア語がうまい。安田顕演じる原役ものちにそうだが、ロシア人に取りいるというよりも、ロシア人に日本人の要求を伝えるという側面で活躍したようだ。その結果、山本は営倉入りさせられてしまうこともしばしばだが、その真摯な様子は仲間たちの心を打つ。

山本が見せてくれたのは、暗い現状に我慢をする、という姿ではない。
現状をプラスにとらえ、将来に希望を持ち、とにかく生き続けることが必要なのだ、ということだ。山本は家族に会うため、が目的であったが、家族を亡くした多くの仲間は、とにかく生き抜くのだ、ということがおのおのの目標になって行った。

ラストに差し掛かり、山本の遺書が没収されてしまうが、彼ら仲間たちがどう打開したのか。そして山本の遺書の内容は。
年の終わりにとても泣かされる感動作と出会ってしまったことは書かざるを得ないだろう。