鹿田鹿雄

オッペンハイマーの鹿田鹿雄のネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

80点

まず今作は伝記映画なため、あくまでも事実を淡々と伝えていく構成だ。
つまりこの映画で述べられていることはオッペンハイマーだけでなく、原爆に対する当時のアメリカ人の考え方がどうだったのか訴えているということだ。
人によっては悲しく思うかもしれないがこれが事実なんだと突きつけられる筋立てになっていると思う。

しかし原爆を助長する映画ではなく、生み出した張本人でありながらも間違いだったと感じ始めたオッペンハイマーを主役に描いていることから、観ていて原爆は間違いだったんだ、そしてこの映画は反核の立場を強く主張したいんだと分かる。
そういう意味ではトリニティ実験の後の描かれ方がとても重要で、そのことも監督はしっかり理解していたと思う。

トリニティ実験の後の演説中に皮膚が焼け爛れた聴衆、足元に転がった黒焦げになった焼死体の幻覚が、そして聴聞会でも原爆の光の幻覚を見るようになったことから、彼が原爆に対して恐怖を抱き始めたことが伝わる。

トルーマン大統領との会話で「自分の手は血塗られている」と発言したシーンからも、彼が原爆開発を後悔するようになったことは十分伝わると思う。

ラストで「核の連鎖反応が世界を滅ぼすかもしれない、そしてそれに成功したかもしれない」と世界の破壊者となったことをアインシュタインに伝える。

そして核爆発の連鎖によって地球が飲み込まれる未来を想像し、幕を閉じる。



ラストでオッペンハイマーが想像した核連鎖が起こる未来は、このレビューを書いている現在、2024年3月29日には幸いなことに実現していない。

最後にあなたは一体どうするかというようなメッセージ性を残して終わり、否が応でも考えさせられる。事実この映画は世界的に大ヒットし、そして世界中の人が考えるきっかけになっているだろう。

これが核を生み出した者の物語であり、その人は核を生み出したことを後悔している。

さて、あなたはこの映画から何を感じたか?



核を生み出した者の物語から核の脅威を伝える分には十分に良い出来だと思う。
鹿田鹿雄

鹿田鹿雄