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ヒヤシンスの血のMrFahrenheitのレビュー・感想・評価

ヒヤシンスの血(2021年製作の映画)
4.2
1980年代のポーランドのゲイコミュニティで起きた殺人事件。捜査結果に納得できない若き刑事ロベルトが独自捜査を続け、事件の真相に迫りつつ自身の内面にも気づいていくお話。

フリードキン監督、アル・パチーノの「クルージング」が頭をよぎったが、あそこまでゲイコミュニティの性的な一面にフォーカスすることなく、クライムスリラー且つ今の時代に相応しいメッセージ性を備えた社会派ドラマとしてバランスがよかった。主人公を演じたトマシュ・ジェンテク君いい演技してました。覚えておきます。

タイトルの「ヒヤシンス」とは同性愛者の隠語だそうで、実際に1980年代のポーランドでは同性愛者を炙り出しデータベース化する差別的なプロジェクトが国家により行われていたそう。「ヒヤシンス作戦」は過去の話だが、残念ながらこの抑圧的な状況は現在も解消されておらず、ポーランドのLGBTQへの差別的政策に対してEUが法的措置を講じたのは今年の話。
仕事を通じて知り合ったポーランド人の方がいて、彼女は当事者ではなくAllyなのだが、SNSで現在のポーランドの状況を発信してくれているのを思い出して胸が苦しくなった。

映画も並行世界的ハッピーエンドを迎えるわけではないが、こうした作品がポーランドで作られ問題提起されること自体、社会がよい方向に向かっている証しだと信じたい。胸に沁みる映画でした。