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マイスモールランドのhuaのネタバレレビュー・内容・結末

マイスモールランド(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

日本という国のとても大きな問題を孕んでいて、本作を観た後ずっと頭を巡らせている。

日本の難民認定数は世界にも類を見ないほど少ない。
本作では善良で真面目なクルド人家族が、なぜ認定されないのか、融通の効かないこの国の制度に苛々する。

迫害を受けて故郷を追われ世界各地に逃れているクルド人。そうした背景から日本に逃れてきて、日本しか知らない子ども達と共に生きている。
家族が一緒にただ幸せに生きたいことが、なぜできないのか。基本的人権とは日本人にしか通用しないのか。映画の中のクルド人家族はもう日本人でいいのではないかとさえ思えた。

とはいえ、出稼ぎ目的の偽装難民がいることも確かで、条件や審査が厳しくなるのも事実。
全編、幼い頃に難民として家族で来日したサーリャの目線で描かれているので、淡々と認定できないことを伝え、事務的に手続きを進めるその扱いに憤ったりするが、日本の行政側から考えると、認められない理由があることも忘れてはならないのだろう。

コンビニでバイトをするサーリャが「日本語が上手ね」と老婦人に声をかけられ複雑な表情をする。実際に私も声をかけてしまった経験があり、無意識に日本にいる外国人を区別していたことにゾッとした。
悪気なく発した言葉で傷ついたり、孤立を感じる人がいることに無自覚だった自分に気付かされた。

在留資格を失って、働くことも、居住する県を出ることもできなくなる。ずっと日本に住み、普通に暮らしてきたのに、生活に制限がかかれば生きていくことが難しくなる。
これこそが人権侵害である。

ロシアのウクライナ侵攻によって、約2000人のウクライナ人が日本まで逃げてきた。
国を離れなければならなかったのは、ウクライナ人もクルド人も同じと考えるとその扱いの違いが理不尽だとも感じる。

ウクライナ人は国を出る理由が戦争であり、それは避難民と言われ、住む場所、仕事を斡旋してもらえ、義援金までもらえる。
一方、クルド人は国から迫害され、
難民であり、就労等の生活が制限され収入が得られない。
理不尽に感じるのは当然だろう。

昨今のニュースでも取り上げられた入管問題などを見聞きすると、日本という自分の国が嫌いになりそうだ。
護られるべき人が護られる。
救われるべきものが救われる。
日本がそういう国であってほしいと願わずにはいられない。

そんな意識を持てたこの作品に感謝しかない。
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