アー君

オマージュのアー君のレビュー・感想・評価

オマージュ(2021年製作の映画)
3.4
鑑賞直後の印象では少し微妙だったが、レビューのためにアレコレと思い返してみると段々と評価が上がってきたので、秀作でとても深みのある映画であった。

【↓以下はネタバレ↓】















喫煙をする韓国からきた女性留学生が「故郷では年上の前でタバコを吸うことは絶対にできない。」話を思い出した。

日本も儒教の影響は受けているが、朝鮮儒教は因習とまでいわないが、今の時代でも男女共同参画と唱えながらも建前であり韓国の女性にとっては根深く残っているものだと痛感した。

構成としては静かにストーリーは進み三流の中年監督の日常的な世界を淡々と描いている感じ。
腫瘍摘出手術後に夫に「ブラザー」と呼びかけるあたりは男社会に対する皮肉として好感が持てるシーンもあり、ギャグ要素が小気味よく散りばめられていたが、どこか全体的にとっ散らかっている感じがした。

意地悪な見方になるかもしれないが雰囲気的に「めぐりあう時間たち」に近く、主人公ジワン、ホン・ジェウォン監督、女性判事、この3人の関係は『映画の中の映画の映画』という構造だと思うが、草間彌生の立体作品にみられる万華鏡のようでもあり、女性性の反復が露骨にみえてしまったので、共感を求める以外に訴えかける何かが欲しかった。

また映写機と失われたフィルムに対する描写が弱く、例えばデ・パルマ「ミッドナイトクロス」のような機材に対しての偏執性があればストーリーとしての緊張感が生まれたとは思う。

しかし韓国における保守的な映画業界は女性監督の苦しみを実在の人物をモデルにフィクションの要素を混ぜながら静かに描いたからこそ私には響いたので是非ともみて頂きたい映画である。

[ヒューマントラストシネマ有楽町 10:00〜]
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