おいなり

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーのおいなりのレビュー・感想・評価

3.8
連れと観てきました。歳がバレるのはアレなんですが僕はがっつりとFC世代なので、きちんとあの頃のマリオが具象化されてることにまず驚いた。

柔らかそうなものがちゃんと柔らかく表現されているという、当たり前のことなんだけど、そういう表現のバランスがイルミネーションはほんとにすごい。人の肌の、奥が光で透けるような微妙なさじ加減。キャラクターデザインは思い切りデフォルメなのに、むしろデフォルメだからこそちゃんと生物的な温かみが表現されているのがすごいなぁと観てる間語彙力を奪われるような感じだった。

日本映画の3DCGがこの領域に達するには、あと50年はかかる。日本発の世界的キャラクターの映画を日本が作れないというのは切ないが、少なくともイルミネーションと組んだ任天堂の選択の正しさはこの映画に100%正当化されている。きっと日本のスタジオに作らせたら今ごろ「マリ泣き」させられていただろう。



マリオの映画を観に来た観客が観たかったものを完璧に提供してくれるという点で、マリオの映画化としては100点満点の出来だと思う。

ただの配管工が拐われた姫を助けて世界を救うという、なんとなく受け入れられてるけど冷静に考えると変な設定を、今どき風に異世界転生ものの設定を組み込むことで違和感なく解決されている。ピーチも拐われるばかりでなくちゃんと戦えるヒロインとなっていて、観ていて痛快だった。実はスーパーマリオ2(USA)の頃から戦うヒロインだからねピーチも。

配管工なのにやたら運動神経が良すぎるマリオについても、日々の通勤(?)で鍛えられたパルクール技術の賜物という妙な設定が付け加えられてて、リアルにした時に観てる人が違和感を感じにくいよう配慮が行き届いている。

マリオが実はキノコ嫌いって設定、どっから出てきたんや!



ブロックを叩いてアイテムが出てくるとか、キノコ食ったらデカくなるとか、これまで記号的な描かれ方しかされてこなかったキノコの国の物理法則も、きちんと映像化にあたってディティールが凝って作られていて。

ファイアフラワーに触れると服の色がボッと変わるところとか、見た目のカッコ良さだけでなく、ああ、そんなふうになるんだ!という納得感があった。たぬきマリオの飛び方まんまソニックのテイルスだけど大丈夫そ?



ドンキーコングにはじまり、スーパーマリオからマリオカート、ベビーマリオに若干のスマブラ要素まで盛り込み、マリオが辿ってきた40年の足跡を丁寧に映像化。ほぼ内輪ネタみたいなイースターエッグの積み上げで成り立ってるけど、なんせ「内輪=この映画を観たほぼ全員」と言っても過言ではないので、熱心な批評家以外はケチのつけようもない。

見事にハイウッドナイズされた過剰演出は、ワイスピかよと思わされるような場面もあり(いやむしろ実写でアニメ映画と並ぶアクションやってるワイスピがすごいんだが)、全体的にスカッと爽快。

無難な作りといえば否定できないし、ユーモアの入れ方がちょっとお利口さんというか、任天堂に気でも遣ってんのかァ???と思う場面もないでもないけど、アトラクション映画としては文句の一つもない。



しかし視聴層考えれば仕方ないんだけど、吹き替えはデカいスクリーンで一日6回も7回も鬼リピされてんのに、字幕は端っこのスクリーンでレイトショー一回のみ。。。という近所の映画館の扱いの差には、切なくなってしまった。せっかくクリス・プラットにアニャ・テイラー=ジョイと海外声優陣も豪華なのにね。
おいなり

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