本好きなおじぃ

ちょっと思い出しただけの本好きなおじぃのレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
3.9
タクシードライバーの葉は、こんなに若いのに転職したのか、と聞かれながらも、日々いろいろなお客さんを乗せている。
照明スタッフの照生は、上司に怒られながらうだつの上がらない日々を過ごしている。

葉の通話アプリのアイコンが、元彼の飼っている猫の画像のままだった。
照生は、足をくじいてしまい、ダンスを踊れなくなってしまっていた。

照生は、葉に自分の気持ちをうまく伝えられずに、葉の気持ちを損ねてしまった。



ふとしたときに少しだけボタンを掛け違えてしまった2人。
その掛け違えを、元に戻すことはできなかった。
付き合っていたあの頃は、あんな風に考えていたなとか。
付き合いたての頃はあんなだったなとか。
ふと思い出してしまう。



こういう映画の場合、わたしたちは元のさやにおさまることだけを期待するのだと思う。
ただ、誰もが経験したように、自分の口から出た言葉は、自分の起こした行動は、それを取り返せないことがほとんどだ。
きっと彼らも、どこかで戻りたかったのかもしれない。

6年間をだんだんさかのぼっている、という映像構成になっているが、ぱっと見はよくわからない、中盤でさかのぼっていることに気づくと思う。
コロナ禍の現在と、コロナ前のマスクの無い日々とが対照的に描かれており、わたしたちも画面の中の現在と過去を見る中で、わたしたち自身の現在と過去を思わず思い出してしまい苦しくて切ない気持ちになるに違いない。

そんな「ちょっと思い出す」のがこの映画なのだ。