むらむら

イノセンツのむらむらのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
5.0
ノルウェーのとある団地を舞台にした、子供たち4人によるサイキックバトル。

画面上は睨み合ってるだけなのに、子供たちの白熱した戦いが繰り広げられてる、この作品の世界観は、俺が中二のときにテスト用紙の裏に設定を書いて、憧れていた超能力対決そのもの。

これが韓国映画だったら、やたら早く動く謎の4人組とか出してCGとスローモーションを多用した、バカでも予算さえあれば撮れるベタな作品になりがちだが、さすが北欧、静かだけど雰囲気あるサスペンス作品になってる。

「俺達ァ健康優良不良少年だぜ!」

といったカッコいい決めセリフはなく、テレキネシスやテレパシーといった超能力が出てきて、無言で子供たちが立ってるだけなのに、精神世界でバトっている設定には、俺のなかの中学二年生が発動しまくり。

新宿ピカデリーに布団があったら、周囲で観てるオッサンたちと一緒に、共感性羞恥で頭から布団を被って足をジタバタさせてたことだろう。

登場人物は基本的に子供たち4人。以下、簡単に登場人物紹介。

1.イーダ

主人公の少女。環境活動家のグレタ・トゥーンベリを可愛くしたような北欧少女。アナの妹。
父ちゃんが空気。

2.アナ

イーダの姉で自閉症。巨人かよ! って思ってしまうくらい背が高い。いろんな特殊能力の持ち主。
鍋のフタが好き。

3.ベン

インド系の少年。残酷な性格で、物を動かす特殊能力がある。特技は白目を剥いて、「ゴジラ」の小栗旬のモノマネをすること。
母ちゃんがエロい。

4.アイシャ

アフリカ系の少女。イタコ芸あり。やたら人と仲良くなるのが上手いコミュ力。
母ちゃんがモディリアーニの絵に出てきそう。

四人とも素晴らしい演技だが、特にベンのワルっぷりは印象に残る。ただしベンが結構リアルにネコを苛めるので、ネコ好きの方は要注意。ネコ苛めるくらいなら、念動力(テレキネシス)でゴミ出しするとか、もうちょっと建設的なことやってよ……。

フィルマの皆さんが指摘して、監督本人も語っているように、大友克洋さんの漫画「童夢」に影響を受けまくり。

特に、クライマックスの公園での対決シーン。団地のブランコで精神世界だけで戦ってるとこ、モロ「童夢」やん。大人は子供たちの精神バトルに気付かないのに、周囲の子供たちだけが気付いてるって設定もあった気がするし。

欲を言うなら、「壁ズンッ」(←Shuさんのレビューより引用)や「俺は好き好んで戦争してるんだ!」といったセリフ、それに変な止まり方をするバイクとか、異常に老けたコドオジやコドオバが出てきてくれれば完璧だった。

ちなみに団地からバトルを覗き込んでいる子供たちに、子供たちのバトルに反応した俺みたいなキモいコドオジがいんじゃないかと確認したが、そんな奴はいなくて残念。

あと、どーでもいいけど、ポスターにある子供(イーダ)が吊るされて上下逆転してるシーン、最後まで出てこなかったよね?

この裏切りには、ポスターを観てからずっと、「いつ、こんなカッコいいシーン出てくるんだ!?」と期待していたイノセンスを返してくれ、という気分になった。

期待したシーンが無かったし、ネコも苛めるので、★4を付けたかったのだが、俺の奥底の中二部分が

「★5を付けろ!」

と、意志とは裏腹に体を操作するので、★5を付けておきました。

(おしまい)
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