本好きなおじぃ

THE FIRST SLAM DUNKの本好きなおじぃのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.1
齢35歳、実は同年代に比べると圧倒的に不足していることがある。
それは、少年漫画に対する思い入れと鑑賞経験だ。

ニチアサの戦隊ものや土曜夕方のウルトラマンシリーズなどは見ていたが、ドラゴンボール、幽遊白書など、熱血でいかにも当時の男の子たちがはまりそうなマンガ・アニメには見向きもせずに過ごした子供時代だった記憶がある。
その中でも見ていたのはセーラームーンの再放送やおジャ魔女どれみなど、女の子向けの作品が多かったように思う。キン肉マンだけはそのキャラクターも相まって熱心というほどではないが、見ていた。
そういったマンガやアニメを見ずに、時刻表を眺めて空想旅行したり、ニュース番組で知見を得ようとしたりする、子供っぽくない子供だった。

本作スラムダンクも、そんなわたしが見向きもしなかった作品の一つで、もちろん周りが見ていて次なる展開に興奮していた様子は全く自分ごとではなく、2022年12月公開のあとも、しばらく劇場に足を運ばなかったが、時間が空いたという理由、そしてこんなに流行っているのに見ないなんてもったいないかもしれないという思いがよぎったので、見ることにした。

見た結果。
とても面白かった。
と言うと子供のような感想だが、私にとっては、バスケットボールについていろいろと初めて知ることも多かったし、何よりも、桜木花道だけではないスラムダンクの脇を固めるメンバーの、プレーや思いに感動したことを総合して言いたいと思う。

桜木花道がマンガ本作でどのように描かれているかはわからない(というか覚えていない)が、今回の主人公と言うべき人物は、2年の宮城リョータである。
宮城家は父に続きバスケ好きだった兄を亡くし、途方に暮れたまま神奈川へ引っ越す。それは、家族としての逃避であっただろうし、何か新しい環境で住みたいという望みでもあっただろう。

そんな中リョータが自らの生き方を託したのは、やはりバスケットボールだった。ケンカもして、うまくいかずに途中で投げ出しそうになったものの、兄の背中を追わんとばかりに打倒秋田・山王工業高校を目指して、湘北高校にて仲間としのぎを削る。湘北の中では、熱心な者とそうでない者もおり、その点も苦労するが、信頼のおける仲間とともにインターハイを勝ち上がった後、山王と対戦するシーンがこの映画のメインになっている。

この試合は、劇場にいながら、スクリーンの中にのめりこむような勢いで見てしまった。
点が入ると思わず(音を立てずに)拍手、相手のパスをカットしたら(声をあげずに)おーと叫び。
実際にその試合をまじかで見て、彼らの走馬灯の中に入り込んだかのようなそういう没入感があったのは、今まで見たほかの映画には無かったと思う。
激しい山王とのつばぜり合い、いったいどちらが勝利できるのか。マンガやアニメを見ておらず、結末や経過がわからない人でも、導入の物語として以上に楽しむことができるだろう。

登場人物それぞれのこの試合に向かっていく思いもつぶさに表現されていたことも、この映画を深めている一点であるに違いない。

ふと、思い出したことがある。
"あー!し、しまった!寝過ごしてしまった!
天才桜木としたことがー!"
という桜木花道がしゃべる目覚まし時計を、子供のころに使っていた。
何の違和感もなく使っていたし、アニメを見た記憶は全く残っていないが、もしかしたらその花道に当時、感動を覚えていたことがあったのかもしれない。