諸君
ゴールすることが美しいのではない
シュートする、その行為が美しいのだ
勇気を持て
強く祈れ
無駄なシュートなんか、一本もない
―エリック・カントナ―
バスケ映画の感想の引用にフットボール選手を取り上げるなんて了見違いも甚だしいが、本作を見終わったときに思い出したのがこの言葉だった。
自分はバスケに関しては基本的なルールくらいしか知らないし、プロのゲームだってまともに見たことはない。それでもスポーツにおける最もプリミティブな感動、つまるところ肉体と精神と技術のぶつかり合いが、120分間のスクリーン上に間違いなく存在していた。終了ギリギリの大逆転ゴールも、プレッシャーの中で決める3ポイントも、初めてボールに触ったあの日のヘタクソなシュートから確実に繋がっているということを、観客に追体験させるかの如く生き生きと描いている。なにより無駄を削ぎ落として「これだけを描きたい」という意図がちゃんと伝わってくる。井上雄彦、単純に映画監督として優秀過ぎないか。
サッカーワールドカップの機運が高まっているこの時期というのも、この映画が人の心を震わせるのに多かれ少なかれ影響していると思う。しかし自分が見ていたものは紛うことなき「ある日どこかで行われた、なんでもない、高校生のバスケットボールの試合」だった。このなんでもなさこそが、スポーツの心揺さぶられる瞬間は決して上位数%のプロとそのファンだけのものではなくて、自分達の日常生活と地続きだということを我々に気づかせてくれる。
まさか年の瀬に、アニメーション映画が年間ベストのダークホースになり得るとは考えてもいなかった。一切の穿った見方は必要ない、愚直すぎるほどの真っ直ぐな若者の躍動に圧倒されればいい。