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霧の中のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

霧の中(2012年製作の映画)
2.5
[霧の中の水掛け論] 50点

セルゲイ・ロズニツァ長編劇映画二作目。カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出され結構好評だったらしい。ロズニツァはウクライナの映画監督とされているが、実はベラルーシ産まれなのでそれが本作品の製作に繋がったのかもしれない。二次大戦下のベラルーシ(白ロシア)におけるパルチザンの男の運命を描くヴァシリー・ブイコフの同名小説の映画化。時代内容場所全てにおいてクリモフ『炎628』やシェピチコ『処刑の丘』を想起させる。

舞台となるのは1942年のベラルーシ。パルチザンのスシチェーニャは一人だけ釈放されたことから、仲間から裏切り者として処刑される…はずが、直前になってナチスに見つかって処刑人二人と逃げることになる。映画では逃げる三人の過去を挿話として語ることで、『霧の中』もとい『藪の中』のように戦時下の人々の生活や行動を多角的に再構築していく。しかし、『藪の中』もとい『羅生門』では曖昧な記憶と話者の見栄によって事実が歪曲されるという意味での"多角的"だったが、本作品では事実を生のまま並べているので三人分の事実が乱立するだけで終わってしまう。極めつけはスシチェーニャが裏切ったかどうかという根本的な問題について挿話で"裏切ってない"という事実を明らかにしてしまい、"やったのか?"→"やってない"という問答がただの水掛け論にしか聞こえなくなってしまうのだ。

『ズヴェニゴーラ』の再構築をした『My Joy』、壮大なたらい回しによる現代ロシア批判を展開した『A Gentle Creature』に比べると、より俗っぽくて好きになれない。残念。
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