アー君

ベネデッタのアー君のレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.8
映画館に足を運んだことが正解で単純に楽しめた。実在する人物だとしても映画用に脚色はしていると思うが、監督ポール・ヴァーホーベンはこの歳(80代)で新境地を切り拓いたと思う。人を選ぶかもしれないが名作を堪能できた。

【↓以下はネタバレ↓】














マリア像を淫具にする描写はかなりインモラルで薫陶受けた人間でなくても挑発的なのは分かる。しかし決してセクシャリティを面白半分に描いている印象はなかった。視覚効果にしても彗星や火刑の赫奕(かくやく)たる色使いは美しかった。

バーホーヴェンの一連の作品は最終的な答えを観客に委ねて明確な答えを出してはいない。(「トータルリコール」だと現実と夢、「氷の微笑」の真犯人)

べネデッタの幻視体験や聖痕は科学が発達していない時代だとしても信じがたい現象だと思う。いまだに特殊詐欺がなくならないのは皮肉な事に人間は現実だけでは満足ができずに脳は騙されたがっている構造かもしれない。

シスターとしての仕事に権威はさほどなくカトリックといえども平等とは程遠く男社会が幅を利かせている。聖痕を受けるのは女性ばかりであり、あの時代に〝成り上がる〟ために行った自傷行為の一種として解釈している。

教皇大使やシスターが息を引き取る間際になるとここぞという感じで聖職者としてベタに働くあたりは詐欺師であろうと餅は餅屋だなあと(笑)

パンフレットは表紙と中面に使用した用紙の斤量は意図的だと推測するが大幅な差があった。表面はロザリオとタイポだけの絵柄であるが、私ならば木目素材用紙でマリアの彫像を部分的にトリミングしたデザインにするだろう。

[新宿武蔵野館 10:00〜]
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