NG

真夜中乙女戦争のNGのネタバレレビュー・内容・結末

真夜中乙女戦争(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます


圧倒的な絶望を望んだ〈私〉が引き起こした戦争。
これは最高のバッドエンドか、最悪のハッピーエンドか?

にのけん映画だ!と興奮せずにはいられないネオンカラーと反転する景色。原作を大胆にカットしてすっきりコンパクトにまとめる技術。ビリー・アイリッシュ。下から上へ流れていくのではなく縦書きで紙芝居のように切り替わるエンドロール。なにもかもが最高だった。

開始早々「ちなみにこの映画はあと110分で終わる」と語り、この映画が〈映画を見る映画〉であること、私が現実を映画と地続きのものとして考えていることを示しているのもスマートでよかった。最後の最後にあのスクリーンがあった場所が《真夜中乙女戦争》の決行によりぶち抜かれ「俺たちの映画」が上映されているようにみえる演出もすごい。燃える東京の美しさよ。

心から愛しているものは憎く、憎いものは愛しい。世界一愛しく、世界一憎い東京タワーだけを残し、東京タワーにいた先輩が生き残るのは先輩が東京タワーとおなじ役割を与えられているからなのだろう。

〈先輩〉は白い閃光(=希望)、未来(大人の部分)
〈黒服〉は黒い空間(=絶望)、過去(子供の部分)

なのだとわたしは思う。白い絵の具に黒が落ちてグレーになってしまったらどれだけ白を足してももう白には戻らない。グレーのまま生きるか、黒に染まるか。

「幸せになりたいと願う人間が、いつまでも幸せにはなれない理由を知ってるか?今の自分は全く幸せではない、と自分で自分を呪い続けるからだ」

「幾ら広い家を手に入れたってどうせ最後は棺桶だ。タグ・ホイヤーを買ったってスマホで時間は分かる。ジョンロブを買っても満たされない。ハリー・ウィンストンやらシャネルなんて女に買ったって自己満足に過ぎない。どんなブランドも所詮、鉄、革、繊維、布だ。筋トレしたって最後は人間、骨になる。上等なものを食べようが最後は下水だ。なんのために生きているんだろうなと思う」

「もし全部、同じことの繰り返しだったらどうする?誰かと別れても、どうせまた赤の他人と腹の探り合いから始まって、デートして喧嘩して食事して終電なくしてホテル行って、もうずっと同じことの繰り返しだったらどうする」

わたしたちは結果ばかり求めてしまうけど、世間や他人がつくった幸せなんてのは幻想で、そんなものは一生手に入らない。結果ではなくいま生きているこの瞬間にしか幸せは存在しない。わたしたちがほんとうに燃やすべきなのはきっとじぶんのなかに存在する〈黒服〉なのだろう。
スマホでも時間はわかるけど時計があったら便利だし、ブランド品をもらったらうれしい。自己満足でも別にいい。自己満足上等だ。おいしいものをたべられたら幸せだし、健やかな精神は健やかな肉体に宿る。誰が相手でもデートして喧嘩して食事して終電なくしてホテル行くだけかもしれないけど、全部が全部一緒なんてことはありえない。それにそういう駆け引きだってただめんどうなだけじゃないはずだ。結果だけを求めて全部無駄だと思えば無駄だけど、無駄なことなんてなにもないと思えば無駄にはならないでしょ?

「私たち学生は、恥を搔くのが一番大事なことなんだ」

「生きているなら、今は、それでよしとしてあげるよ」
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