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ボーはおそれているのmmmのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

一応、鑑賞順に書いているのですが、
書くペースが観るペースに追いつかない…
ちょっと繰り上げてこちらを。

あら意外!
案外、受け入れられてしまった。

うまく感想書けないので、かい詰まんで
見たものを書き残す感じになりました。
(とても長いです…)
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治安の悪い地区に1人暮らしするボー。

彼は極度の不安症らしく、自宅でカウンセリングを受けている。
カウンセラー相手の会話も、不安が根底にある話題ばかり。
幼少期にあまりよい思い出がなさそうなのだが、
明日帰省することが決まっているらしく、それはとても楽しみだという。

カウンセラーも「本当に楽しみなの?」と確認するが、
強く肯定する。
カウンセラーはスペシャルな薬を処方(指示)し、
くれぐれも水を一緒に飲んでねと念を押して帰っていく。

部屋の一歩外は、ゴッサムシティ顔負けなくらい
ぶっ飛んだ状況になっており、外に出るのも一苦労って感じなのだが、
(普通に鍵もって出てもダメっぽい)

夜の間、延々と覚えのない騒音で隣人にブチ切れられ、
待ちに待った(?)帰省なのに、寝坊した上、ちょっとした隙に
スーツケースや自宅の鍵を盗まれたり、
今日は帰省できないとママに電話したらマジ切れされるし、
鬱々として薬を口に放り込んだら、水がないし、水道も止められてる
慌てて向かいの店に水を買いにいくも、クレカが使えず現金も足りず
泥棒扱いされ、その間に関わりたくない大勢のご近所さんに
部屋を占領されたり
朝になって、やっと戻ると、部屋の前に遺体が転がってるし
相変わらずクレカも使えず途方に暮れる。

そして、もう一度ママの電話に電話すると、電話に出たのは配達員
どうやら、この電話の持ち主が死んでいるとのこと。
事故なのか顔の判別もつかないと言っており
取り乱しまくる(そりゃそうだ)ボーだが、
とりあえず…と入ったお風呂も、なんと天井に人が!!
そして落ちてきた。

(しかし、この状況まだ続く…ん?ずっと続くのか?)

館内で注意喚起されていた毒クモから逃げる為、素っ裸で外に出ると
助けを求めた警官からは銃で撃たれるし、ニュースになってた全裸のサイコパスに
ターゲットにされ、逃げたところを車に轢かれてしまうのでした。

もう、神様が思いつく限りの世の不条理をここにまとめてみてみたよ!!
ってくらいの状況だった。

(すでに観てる人も疲れてるはず…)

目覚めたら、可愛らしい部屋に寝かされているボー
どうやら、轢いてしまった夫婦が助け、自宅でケアしてくれているよう。
旦那さんは外科医、奥さんも優しそう
これは不幸中の幸いってやつかしら。

至れり尽くせりなのだが、アリ・アスターだもの、
そうはさせないよ!

宗教上のしきたりで、一刻も早くママのところに
駆け付けて葬儀を執り行わなければならない。
それなのに、この夫婦が何かと阻んでくるのですね。

夫婦は息子を戦争でなくしており、そのことに心を痛めているけど
そのことしか考えておらず、娘もいるのだけど完全放置。

ここで初めて、今で言うところの毒親の話なのかな?
と気づくことになるのですが、まぁ思った傍から、
この夫婦が善良そうだけど狂気的に見えてくるのです。

庭にいるガタイのよい男は、戦争から戻った息子の友人。
PTSDを患っているそうだけど、話からすると息子を殺したのは
彼なのかなぁと。
世話をするものの、自宅には絶対に入れず、庭のトレーラーハウスで
生活させるの、ある種の報復なのかも。

とりあえず、この人が窓の外に突っ立ってるだけなのに怖い…

やさぐれた娘ちゃんとその友達にドラッグ強要されたり
スマホ動画を回されたり、あげくは振り切って
自殺の道連れにされそうになったりと散々な目にあって、
ボーは、なんとか脱出!

森を彷徨ううちに現れた不思議な集団で
(同じような境遇の人が集まってるのかな)
おこなわれた演劇は、ボーのアナザーストーリー的な感じ
亡くなったと聞かされていたお父さんらしき人に遭遇したり
束の間の休息を得るも、保護されていた家にいたお兄さんが
追いかけてきて、その集団を標的に…

(だって、アリ・アスターだから)

そこからも何とか逃げ出し、ヒッチハイクでようやく実家へ到着。

(本題はここからです)

葬儀は既に執り行われ、ボーは棺に横たわる首なしママに
やっと再会
ママは巨大な企業をいくつも運営していたのですが、
その業績が自宅のそこかしこに。

それを眺めつつ、哀しみにくれつつ外に出ると
幼い頃、旅先で出会った淡い初恋の相手にばったり遭遇します。

向こうも覚えてくれていて、ぐいぐいボーを誘惑し
ボーもその気に…

書いてきませんでしたが、ボーはママに淡い恋路の邪魔を
されただけでなく、父親はオーガズムのせいで死んだと
言われていて、セックスに対し恐怖心を植え付けられていました。
ところが大変、試してみれば素晴らしいことだと
感極まります。
上をみあげると…その初恋の相手が腹上死をしてるではありませんか。

(だって、アリ・アスターだから)

驚きと不安が一気に溢れて、恐怖で動揺しまくっているボーのところに
現われたのは…ママでした。

(死んでなかった!)

なんと、この壮大な帰省の計画はママによって画策されたものだったようです。
ボーも薄々気づいていたかもしれませんが、おとりとなった首のない遺体は
長らく使えていたメイドさん。
さらに衝撃の事実として、ボーの住むあの部屋やボーの行動は
ずっとママに監視されてきたわけです。
カウンセラーも実はママの差し金。
食べているものや生活の中には、ママの会社の製品だらけ。
ボーが仕事をしている様子はなかったので、なんらかサポートを
受け続けていたのかな。


今どきでいうと、毒親。
親子とて愛憎は常に表裏一体なんですかね。

ここからママは溜まりに溜まった憎悪を、ここぞとばかりにボーにぶちまけます。
女だけが腹を痛めて子を生み出すことの不条理
出すだけでお役御免(ちゃんと育児参加した人には申し訳ないんだけど)の
夫は、ママには性欲マシーンみたいに感じてしまい、
死んではいないが、屋根裏に閉じ込めていたそう。
(現実を見よと、ボーを屋根裏に追いやると、確かにパパは
モンスターになっちゃってました…Oh…)

息子(ボー)に対しても、可愛さ余って憎さ百倍といいますか、
いくつかのボー本人にとっては子供のいたずら的なものでも
ママにとっては愛が憎しみに変わる瞬間だったんでしょうね。

冒頭のママ視点の出産シーンなども思い起こされます。

とはいえ~
…ママ、やりすぎやで。

いや、子供は授かりものとか、わたし達の元へ
やってきたとか言うけどさ、子供は親選べないから。
そして、親も子を選べないから。

(身体の事情はあるとはいえ)出産できる状態だとしたら
そこには産む・産まないの選択肢があるわけで
「ママ、それ一番言っちゃいけないやつでは…」な発言に
ボーも積年の本心がこんにちはしてしまったようで、
ママを殺めてしまいます。

そして、そっとボートに乗って、自由の大海を自身の力で進んでいくのでした。


…と思ったの。
でも、終わらないの。

(だって、アリ・アスターだから)

そのボートの行きつく先が、沢山の傍聴人付きの
水上裁判所みたいなところ。

ママの怒りは頂点に…

ボーの弁護をする者も同罪のごとく
水に沈められ、最後はボートが爆発し
ボーも静かに消えていきました。

傍聴人は無言ですっと消えていき
ありえない文字の細かさで
エンドクレジットが流れていきました。
(見えない…)

この傍聴人は、多分、映画を観ていた私(達)ですかね。
ボーの身の上におこる3時間に及ぶ不条理を、
まさに他人事として安全な場所から
ポップコーンなんか食べながら眺めてたわけです。

もう何を見せられたんだよという気持ちもありつつ
親子ですらこんなものですから、人の辛さって
想像するしかないし、想像してできるものでも
ないんだなぁとも思いました。
(でも想像することは大事だと思う)

序盤のカウンセリングで、既に審判は”guilty”と
決まっていたのかもしれませんが…

無論、母には息子に対する愛があり、
彼の忠義と同時に自立を
望んだのかもしれないけど、
あれだけコントロールしてしまったら、
そりゃ無理だよなぁと思ってしまったので、
個人的には「息子を支配する母の愛憎の復讐劇」で
ボー(推定40代)は、それに完全にハメられてしまった
ように感じました。

どうやら、アリ・アスターは、
ここ作品をお母さんに見せたそうです。
(ママの感想が知りたい)

どちらかというと、息子として
苦労をかけた母親への労りとか
懺悔みたいな気持ちとか、
それこそ愛を伝えたかったのかも。
(見逃したけど、水に返っていくボーが幸せそうな顔だったとか?)

どこまでが(映画の中の)現実で
どこからが幻覚的なものかも
分かりませんが、
「他人のことなんて分からないわー。」

この解釈がどんなもんだかは分かりませんが、
ミッドサマーといい、案外適応してしまった…あはは。

ママ役の独白の怨念が凄すぎて、親の叱咤とかに
トラウマの方は気を付けた方がいいかも。

めちゃくちゃではあるけど、
案外深いかもと思うのでありました。

確かに腰にはきつかったものの
あえての3時間は、観客にねっとりとした
疲れを与えるための時間ですかね。
ボーの苦痛をしっかり味わってね♡という
アリ・アスター監督からの優しさだったりして。
mmm

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