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水深ゼロメートルからのmmmのネタバレレビュー・内容・結末

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

夏休み、水の入っていないプールに集まった
4+1+1人(※)の女子高生と先生の話

補習として呼び出された者
水泳部に所属している(た)者
理由は様々
空っぽのプールには、お隣の野球部の練習で
舞ってきた砂が積もっており、
担当教員に体育の授業の補習として
それを掃除することを命じられるのだが…

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高校演劇リブートプロジェクト第2弾
よって、ベースとなった戯曲は現役の高校生の作品

元が舞台のため、ワンシチュエーション
映画ゆえ、プール以外のカットも入り込みますが、
出ハケの感じに舞台の雰囲気を強く感じ
元の戯曲を活かしたのかな…と思いました。

高校生の感覚で描かれる女であることの葛藤

ある種、学生時代の方が男子・女子という
括りをされることが多いのかも…

野球部の練習で飛んできた砂で
埋め尽くされたプールは練習が続く限り、
掃除してもしても終わりがない中
それを掃除しろとは、近代設定の
不条理劇のようでもありました。

近からず遠からずの距離の女子が集まり、
結構ズケズケと言いたい放題、
ちょっと自己中な雰囲気もあるのだが、
それは強がりでもあり
それぞれが悩みを抱えつつ、
弱みを見せないように踏ん張っている姿に
親目線というよりは、うーーんと昔の
高校時代を思い返してしまうのでした。
口は悪くとも、それぞれの方法で
ケアしあっているのも良かったなぁ。

幼い頃から阿波踊りに参加し、
男踊りを踊ることへの葛藤する者
(作品の舞台は徳島、子供の頃に踊るのは
男女問わず男踊りが主流ということなのかな?)

自らのためにイメチェンを試み、
規則違反のメイクをして登校する者

水泳部で切磋琢磨した幼馴染の男子に
先を越され自信を失いかけている者

そんな彼女の芯のある部分に
憧れつつ心配する者

努力して得たポジションに
報いろうとする者

ネタバレ設定なので書いてしまうが、
先生だって彼女たちの延長上

県外からわざわざ徳島にやってきたくらい
仕事に熱意をもった人なんだろう。
ゆえ、教師としての正論しか生徒である
彼女たちに言葉をかけられないことや
教員間のしがらみと葛藤している気がした。

確かに規則違反は規則違反
だけど、所定の手続きを取らせないからって
生理なのにプールに入らせるなんてさ
あの先生だっておかしいと思ったけど
立場が上の先生に例外なしって言われてしまったのでは…

改修前の水の抜かれたタイミングに
補習を設定したのは先生の気持ちなのだろう。
校内で煙草をふかす先生の表情がよかった。
(いこか様、すっかり役者に…)

まぁ、人の悩みなんて面白いものでもないし、
そんなのどうでもいいわって
スタンスだと退屈なのかもしれない。
それに加え、女が不遇を訴えると、
それをよく思わない者がいつでも
どこにでもいるけど、これは彼女たちの話だ。
水深ゼロメートル"から"進みだそうとする
等身大の切実さを、瑞々しく
そして生々しく描かれた作品でした。

※)4+1+1=プール掃除4人+野球部マネージャー+先生

◆ひとりごと
人の感想にケチつけたくはないんだけど、
高校生演劇というとこにしか共通点はないのだが、
アルプススタンドのはしの方と比べる人が多いことに
驚いた。
テンポのよさとか明るさとか面白さがどうしても
求められてしまうのかなぁ。
舞台版は数年前に上演済みということで、
映画と前後しての上演だったら観てみたかった!
届くべきところに届いて欲しい作品
mmm

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