椿本力三郎

とんびの椿本力三郎のレビュー・感想・評価

とんび(2022年製作の映画)
4.1
重松清による原作小説でも泣いたが、映画はもっと泣いた。

ストーリーや人物の設定は同じものの、
テンションの置き方が違うのと
脇を固める女優陣がいずれもめちゃくちゃ上手い。
「話は知っているけれども泣ける」というのは、
解釈とコントラストの問題であって、
落語の同じネタでも演者によって違う、
同じ演者でも場と練度が違えば別物というのと同じだろう。
そうだね、コテコテのベタベタの人情ものという点も
この作品が落語的かもしれない。
年間に数本は心と感性の健康のために見ておいた方が良い。
良い意味でひねりの無い、ストレートに泣ける作品。

街の居酒屋での濃密な人間関係って、
やはりセーフティネットとして必要なのだろうと思う。
もちろん「酒の席」を言い訳にしてパワハラセクハラは許されないものの、
「酒の席」という甘えや余白があるから伝えられる感情もある。
これは「良い昭和」やな。

薬師丸ひろ子の強さとはかなさ。
大島優子も杏ちゃんもとても良い。
いずれも本人の人間性と人生が演技にそのまま出ているように思う。

阿部寛の「やんちゃ」と「くたびれ」の自然体の演技。
これからもヤスケンとコンビを組んでこういう人情ものにトライして欲しい。