「ビートルズの曲が流れないビートルズのドキュメンタリー」
とか
「オアシスの曲が出て来ないリアム・ギャラガーのコンサート映画」
とか、そんな作品ばかり観ていた俺が、ようやくたどり着いた、音楽ドキュメンタリーの真打ち登場。
長兄のバリー、双子の弟であるロビンとモーリスの三兄弟で結成されたビー・ジーズ。結成からイギリスでの活躍、低迷期を経て、R&Bに傾倒してからの「サタデーナイト・フィーバー」での特大ヒット、ディスコミュージックの排斥といった歴史を重ねながらも、素晴らしい曲を作り続けてきた彼らの素顔に迫る。
それほど曲を知らないから楽しめないかも……とビクついてたのは杞憂だった。
これまでに制作した曲は、なんと1000曲を越える。なので、ちょっとでも映画や音楽に触れてたら「あ、これ聴いたことある!」って曲がきっとあると思う。
ビー・ジーズの曲は言うに及ばず、例えばサザンオールスターズ……じゃなかったバーブラ・ストライザンドの「Woman in love」など、多くのヒット曲も彼らの手によって書かれている。
また、メジャーデビューにビートルズのマネージャーであるブライアン・エプスタインの会社が関わっていたこと。ビー・ジーズの代名詞とも言えるファルセットの美しいハーモニーは中期に形作られたこと。「Stayin’ Alive」が、世界で初めて手作りのドラムループによってビートを刻まれてること……などなど、興味深い逸話が目白押し。
さらに、メンバーや関係者以外のインタビューとして、エリック・クラプトンやコールドプレイのクリス・マーティン、マーク・ロンソン、ジャスティン・ティンバーレイク、それにオアシスのノエル・ギャラガーなど、超豪華な面々がビー・ジーズの魅力について語ってくれる。
「兄弟でやる音楽は金で買えない魅力がある」
と経験を交えて語るノエルと、
名盤「461 Ocean Boulevard」のジャケットで有名なマイアミの家にビー・ジーズを招き
「アメリカでの制作をスタートさせたことが、ビー・ジーズの1970年代後半の大ヒットにつながった。俺の最大の功績だと思うよ」
と笑うエリック・クラプトンが印象的だった。
他にも既存映像ではあるものの、アカデミー賞でのジョン・トラボルタや、グラミー賞トリビュートライブでのエド・シーランなどもちょっぴり出演。
ではあるが、冒頭のインタビューからエンディングに至るまで、長兄のバリーの姿がとにかく印象に残る。
「ようやく気付いた。真実なんて何もない。全ては知覚に基づいているのだ」
「モーリスはロビンとの間の潤滑油のような存在だった」
「弟たちが戻ってくるなら、ヒット曲なんていらないよ」
といった言葉で、長いビー・ジーズの旅路を紐解いていくバリー。
三兄弟に入れなかった四男のアンディ・ギブは、ようやくビー・ジーズに加入できたかと思ったら30歳で早逝。弟二人も、すでに鬼籍に入っている。
もはやビー・ジーズのオリジナルメンバーは長兄のバリーしか残っていない。
「君の愛の深さを教えてほしい
だって僕たちが生きる愚かな世界は
僕たちの中を引き裂こうとしているのだから
本当は僕たちは 一緒にいるべきなのに」
こんなビー・ジーズの歌詞と、バリーの姿がオーバーラップする。
それでも最後に
「残り時間は少ないかもしれないが、生き続けている限り、音楽を届けていきたい」
と語るバリー、もうお爺さんだけど、めっちゃカッコいい!!
ラスト、2017年のグラストンベリー・フェスの映像。
気持ちよさそうに「Stayin’ Alive」を熱唱するバリーと、楽しそうに踊るお客さん、そしてセキュリティみんなの姿が印象的。 → https://youtu.be/y2ivHgTV-R4
これだけ幕の内弁当のように内容がギッシリ詰まっていて、しかも30曲近くビー・ジーズの曲が聴ける。俺のようなキモいオッサンに向けたちょっと早いXmasプレゼントもしくはお年玉としては、もったいなすぎる、豪華な作品。
音楽好きな人には是非観て欲しいと思いました。
それにしても、この作品を観るにつけ、ビートルズの曲が一曲も流れず、ビートルズのメンバーは写真とイラストでしか出てこなかった「ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド」を作ったオッサンへの怒りが改めてフツフツと沸いてきて、あの自分語りオッサンをブン殴りたくなってしまった……。
(おしまい)