本好きなおじぃ

漁港の肉子ちゃんの本好きなおじぃのレビュー・感想・評価

漁港の肉子ちゃん(2021年製作の映画)
4.0
見須子喜久子(みすじ・きくこ)は、愛称きくりんと呼ばれる小学5年生。母の見須子菊子(みすじ・きくこ)と一緒に、とある漁港に留めてある船で2人暮らし。
母は愛称"肉子ちゃん"。焼肉屋「うをがし」で働く、デブでブサイクだが、天真爛漫な言動で周りの人々を和ませる。
肉子ちゃんは、あちこちの街で男の人に惚れては騙され、借金を背負わされてしまうが、それでも明るく前を向いて生きてきた。
きくりんのクラスも、騒がしい。昼間はドッチボールをしようと集まるものの、クラスの雰囲気はあまりよくない。きくりんとマリアちゃんの登校時には3人の男子がついてくる。きくりんは少し心に日々ひっかかりを覚えながらも、肉子ちゃんに相談できないでいる。肉子ちゃんはそういう細かい感情におそらく興味がないからだ。

きくりんは、マリアちゃんがバスケをしようとしているグループを分裂させようとしているところに誘われるが、正直に参加できないと伝える。すると、今度はマリアちゃんがこいつするようになってしまう。
そして、肉子ちゃんがあるときお祭りでお好み焼き屋さんの男子に惚れている姿をきくりんは見てしまい、その後夜な夜な電話している母の姿を見つける。
いろいろと心穏やかではない出来事が起こり続けるが、ある朝、腹痛を起こしてしまうが、肉子ちゃんに言い出せずに倒れてしまう。


こんなとんでもない名前だけれど、天真爛漫なキャラクターも間違いではないのだが、とにかく純粋で、娘や人を信じる事ができる人を、こんなに楽しく描くことができるのか、と感嘆しました。
最終盤にかけて重大な事実を肉子ちゃんからきくりんに打ち明けることになるのだが、そこは涙なしでは観ることができなかった。その一瞬間に人間としてどうあるべきか、どう生きてほしいか、強いメッセージが込められている。

この映画は、直木賞作家・西加奈子さんの「漁港の肉子ちゃん」が原作であるが、2011年に単行本、2014年に文庫本が出版されて以来、この本はとにかく毎年少しずつじわじわ売れていた(注:この文章の作成者は書店員)。わたしは原作を読まなかったのだが、なぜそのように売れていたのか、この映画を見てようやくわかった気がする。
明石家さんまさんのプロデュースでこの映画は作られたが、観るまではやや懐疑的だったけれども、哀しさと笑いのバランスもとてもよく、充実した時間になった。

なお、配給元のアスミックエースが制作している以下も観ると、より作られた背景がつぶさにわかるだろう。
公開記念スペシャル
前編 https://www.youtube.com/watch?v=FZyErZwRw-o
後編 https://www.youtube.com/watch?v=Od0WdT1FaZM