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セブンの教授のレビュー・感想・評価

セブン(1995年製作の映画)
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とても面白かったのだけど、感想が湧いて来ない。
ただ、劇場公開時を知っているので、時代の「潮目が変わった」という革命的な映画であることは後年になってよくわかる。

つまり。明るく大味な「ハリウッド大作」の質が本作を機に大きく変わった、という作品。
一言で言えば、酷く暗くて、残酷で、得体の知れない人間の闇を、あの「ハリウッド」がそれなりの大作、メジャー作品として製作してヒットしている、ということの驚き。

そして、カイル・クーパーのタイトルバックをはじめとした映画のトーンを周到に「デザイン」した画面設計。70年代回帰的なフィルムノワール、あるいはクライム映画的な作劇を当時としては最新のルックにアップデートしているセンス。

今から思えば、まだまだ若造なフレッシュさが溢れるブラッド・ピットと、メンターとしての渋さを抱えたモーガン・フリーマンの老刑事とのバディ映画としてのエモーションなど俳優たちの演技的なカタルシスの高さも魅力。

「7つの大罪」をモチーフにした陰惨極まりない殺人の手口は、その妄想を募らせたアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーの気分を反映させたポール・シュレイダー風味の脚本の面白さと凄み。

実際に現在でも、充分楽しめるほどの面白さを感じるのは、技術部門でも制作部門でも優秀なスタッフワークと、それを束ねる無駄のないデヴィッド・フィンチャーの演出力の高さによるもの。

捜査のタイミングができ過ぎで、犯人であるジョン・ドゥ(ケヴィン・スペイシー)が「偶然」まで想定し難い計画通りに物語が「ありき」で進んでしまっている違和感はあるにはあるが、いわゆる「ネタバレ」をしたとしても、それすら回避している構成の巧みさはさすが。
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