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ゴールド・ボーイの教授のレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
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久しぶりに後味の悪い映画を観たという感想。
充分面白い俗悪なエンターテイメントだと思う半面、ディテールの粗さや、俳優たちの演技の大仰さに疲れたという気持ちもある。

部品は揃っているのだが、ドンデン返し的な展開に対しては、人物描写がその分平面になっている点は、没入しづらい。
家族間のDVの問題も、地方都市を牛耳る財閥企業の腐敗と警察の腐敗の問題も、一応は物語に入り込みつつ「サイコパス」で括られてしまうと全く無関係になってしまう。

加えてそのサイコキラーの東(岡田将生)が実は単に「金目当て」な点も気になるし、入念な計画と劇中で説得されるだけで、そこまで有能に見えないのもモヤモヤする。
一方で、全てを手玉に取る朝陽(羽村仁成)の感じ悪さは、僕自身のメンタルが弱っているからか、シンプルに倫理観が疼いてしまって客観視できない。
それだけ物語に入り込んで楽しんでいるとも言えるし、本作で描かれている「露悪性」が受け付けられないというのも大きい。

ダークヒーロー的なキャラクターが嫌いなわけでは決してないのだが、そこにも「サイコパス」なりの人間的感情や悶え、煩悶がないと好きになれないのかもしれない。
そういう意味では東の方がとても人間的であったと思う。

恐らく自分にあるこの映画に対してのスタンスは、この朝陽というキャラクターに対して、空虚というよりは、短絡的で感受性に乏しく、たまたま悪知恵が働き、しかも倫理観がなく欲望しかない、という点に嫌悪感が強いのだと思う。
感情的に、そこまで引き込まれている点で、それは映画の勝ち、なのだがそれを見せられてどう思えばいいのかは判断に困っている。

確実に言えるのは、岡田将生や羽村仁成、前出燿志や星乃あんなという主要人物はドンピシャなキャスティングながら、他の割と著名な俳優陣のハマらなさは大きなマイナス。
「悪徳の栄え」的な挑発は評価できても、諸々の映画的デザインの面ではノイズの多い作品、といったところなのかも。
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