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マンティコア 怪物の教授のレビュー・感想・評価

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)
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個人的には、精神の安定が必要な状態でメンタルは安静にしていないといけない状態なのに、本作はあまりに危険で終始ドキドキしていた。
きっと、本来は誰しもに内在する「怪物」の存在。
だからこそ、誰もが様々な形でそれを閉じ込め、やり過ごし「モラル」に沿って生きる。

それがいかに曖昧で、脆弱で。
しかし、社会や通念はあまりにも強靭で、だからこそそこに脱落していく恐怖。
そのことが本作でははっきりと明示されていく。

「ペドフィリア」という潜在的な欲望を、自分でも自覚していなかったフリアン(ナチョ・サンチェス)。
しかし、本作を注視していれば、それは額面通りの欲望ではない。それはクリスチャン(アルバロ・サンス・ロドリゲス)の繊細さや聡明さに「惹かれて」いたのもあるからだ。
その他者への渇望を、あまりに表層的に判断する「社会」の存在こそがフリアンの怪物を目覚めさせてしまう。

またディアナ(ゾーイ・ステイン)の存在の大きさ。クリスチャンにどこか風貌が似ていて、それでも「関係性」によってフリアンはディアナに惹かれていたはずだし、惹かれ切っていなくても、そうやって育めるものが必ずあると僕は思える。
そして、ディアナもまた父性への呪縛と偏愛によって「介護」にかこつけた執着を持っている。このラストによって誰しもが危うい「マンティコア」を抱えていることが示される。

酷く陰鬱な物語ではあるけれど、僕は心を大きく揺さぶられ、強く共感してしまった。
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