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仁義なき戦い 頂上作戦の教授のレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 頂上作戦(1974年製作の映画)
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シリーズ4作目。
戦後のヤクザ社会の栄枯盛衰がついに本作で極まった感があり巨大な虚しさに貫かれている。
というのも、まず衝撃的なのは主人公広能(菅原文太)の途中退場。アクションエンターテイメントとしてはその「殴り込み」と倒錯しているがヤクザなりの「道理」で筋を通そうとする広能のダンディズムは、完膚なきまでに「政治の論理」によって捻り潰される。

それらは過去シリーズでも笠原和夫の脚本世界によって巧みにその構造と、翻弄される若者たちの犠牲を執拗に描かれてもいたが、本作はより冷淡でドライに「ハシゴを外す」という形で広能を切り捨ててしまう。
そして相変わらずの山守(金子信雄)と、前作以上にヘタレと化した打本(加藤武)であり、矢面に立たされ神経をすり減らすのは純粋な暴力団である武田(小林旭)や藤田(松方弘樹)である。
結局、その上層部への反発から、市民社会に暴力が溢れ出す凄惨さばかりが本作では描かれ続けることが本作の全てである。

ただただ、仁義という建前を捨てたヤクザたちの姿は戦後日本の、資本主義に隷属する日本人そのものであり。
血生臭さよりも、その無常感がやるせない。

その何も残らなかった、という巨大な虚しさを湛えた広能と武田の邂逅は、これまである種の高揚すらあったシリーズとしては真逆のあっけなさである。
少なくとも笠原和夫にとっては、完結編として描かれた物語は、メタに考えればより皮肉な形でシリーズが延命される形で現実を表象して味わい深い。
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