七色星団

いつかの君にもわかることの七色星団のレビュー・感想・評価

いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)
4.1
悲しく、優しく、そして心の奥底にポッと火が灯るような、なんと温かい作品だろうか。

父ジョンと息子マイケルの親子描写の秀逸なことと、余命ものでありながらウェットになりすぎない抑えた演出。喋り過ぎず、過剰な感情表現もなく、ただ二人の日常を丹念に積み上げることで二人の小さな、そして確実な変化を観客へ見せていく。

ジョンの誕生日にマイケルとロウソクをケーキに差しながら、来るはずのない次の誕生日の35本目をマイケルから受け取った時のジョンの眼差し。

関係性がはっきりしなかったけど、親しい間柄と思われるおばあちゃんの話から、死に別れた夫と今でも繋がってる云々のお話。
それが最後にはジョンがマイケルへ伝える父と子の繋がり方にもなる訳で、本当に素晴らしい橋渡しとなるエピソード。

子の幸せだけを願う父。
大好きな父と一緒にいられればそれだけで幸せな子。
ジョンとマイケルの日常はどこを切り取っても心を揺さぶられて、こんな作品もここ数年じゃ覚えがない。

車を運転中にふと見た光景に覚悟が決まったのか、全てが吹っ切れたような笑みを浮かべ、その後マイケルと存分に遊ぶジョン。本編中唯一二人が幸せそうな笑顔で収まるシーン。
永遠にこの瞬間が続けば良いのにと願わずにはいられなかった。

そして…そして、ラストカット。
僕の中の父親成分があのラストカットに全泣きした。
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