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DNA(英題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

DNA(英題)(2020年製作の映画)
2.0
[アルジェリアのルーツを求めて] 40点

DNAとはつまり遺伝を指し、遺伝とはつまり家族を指す。長らくアルツハイマー病で施設に入院していた老齢の祖父は、その子供たち孫たち曾孫たちに囲まれて賑やかな日々を送っている。おじいちゃん子のネージュは祖父の生涯や家族史を製本して彼にプレゼントする。彼らは結びつきの強い家族にも見えるが、呆気なく亡くなってしまった祖父の葬式を巡って所謂フランス的な自己主張合戦が始まり、初監督作『パリ警視庁:未成年保護部隊』の縮小再生産のような映画が展開されていくことになる。流石に同作での自分の役柄が全く必要のないものだったことは学習していたのか、今回は自分が主役となっていて、後半にかけては本人曰く"内省的な"作品へと舵を切る。冒頭で書いた連想ゲームを逆走し、DNA検査を中心に自身のルーツを探る話へと話題がすり替わってしまうのだ。『パリ警視庁:未成年保護部隊』や本作品の前半おける会話の臨場感を、下手くそなハンディで導入するのは擁護できるが、その後の展開までそれが引き継がれるのは勘弁願いたい。しかも、家族を描くにも家族史を描くにもフランス/アルジェリア近代史を覗き込むにも中途半端過ぎる。が、フランス人はなんとなく好きそうで、本作品がカンヌ映画祭で上映されたなら審査員賞を取っただろう(と先に言われてしまってとても悔しい)。

この映画は少々個人的すぎるのだろう。頭の中で渦巻いていることを他人に伝える段階まで至っておらず、"映画"というものにしきれていない。『パリ警視庁:未成年保護部隊』にあった臨場感による呆気なさというのも機能せず、ショットが撮れないなら物語をなんとかせいと思うがそちらも機能せず。途中止めみたいな物語で困惑を残すのみ。真面目にやってくれ。
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