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ビバリウムのsymaxのレビュー・感想・評価

ビバリウム(2019年製作の映画)
3.4
二人で暮らす新居を探すジェマとトム。

怪しげな雰囲気を醸し出す不動産業者マーティンが案内するのは、近くもないけど遠くもない所にある夢の住宅地"Yonder(ヨンダー)"

そこには、同じエメラルドグリーン調の色合い、同じ作り、同じデザインの家が無数に立ち並び、その内の一軒"9番"を内見する二人。

マーティンは二人に語りかけます…"ここは、終の住処"…

気が付くと"9番"の家に二人きり。

気味が悪くなった二人は、"ヨンダー"を立ち去ろうとしますが、"ヨンダー"から抜け出せず、必ず"9番"の家に戻ってしまうというループ状態に…やがて、二人の前に段ボール箱が送られてきます。

箱に入っていたのは、男の子の赤ちゃん。
そして、箱にはこう書かれていたのです。

…"育てれば解放される…

"トワイライトゾーン"や"世にも奇妙な物語"の一話として出てきそうな不条理系のシチュエーション・スリラー。

本作のタイトルとオープニングの"カッコウ"で内容を何となく察してしまい、"いきなりネタバレですか?"と思ってしまいましたし、二人が育てる事となる子供は、人間の姿をしてはいますが、明らかに人ではない"何か"で不気味。

二人が謎を解き、迷宮から脱出する過程ではなく、ジェマとトムが精神的に疲弊する過程をひたすら延々と見せ、謎は最後まで"何となく分かりそうで分からん"ままという衝撃の展開…

見る者も精神的に疲弊し、情緒不安定に追い込まれる"鬱"映画と言え、ある意味下手なホラーより怖いし、辛い…

ジェシー・アイゼンパークがトムを演じ、後半はひたすら穴掘りで何か勿体ない使い方に感じてしまいましたが、ジェマを演じたイモージェン・プーツの慟哭の演技は、胸に突き刺さり居た堪れなくなりますし、実に切ない…

一方、人ではない何かを演じたセナン君の怪演は、本作の不気味さを一段上げる素晴らしさで、初めて"俊雄"君を見た時の衝撃を軽く越えてくる"いや〜な感じ"がまた…

不条理でじわじわと精神的に追い込まれてしまう話ではありますが、これって同じ籠(家)を終の住処として、さして美味くもないメシを喰い、何考えてんだかわかんない子に四苦八苦し、毎日同じルーティーンで働き、寝て…と普段の自分の生活を見せられているような気がして…それが裏テーマだとしたら凄い作品です。
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