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人間の境界のsymaxのレビュー・感想・評価

人間の境界(2023年製作の映画)
3.9
2021年、ベラルーシ政府は、EUに混乱を引き起こす狙いで、大勢の難民をポーランド国境へと移送した…

…"人間兵器”…難民はそう呼ばれた…

一方、ベラルーシと国境を接したポーランド政府は、それに対抗すべく、緊急事態宣言を発令し、難民の"押し戻し"をしていた…

そして難民は極寒の森の中でさまようしかなくなってしまうのだ……

緑一面の美しいカラーの世界から色が無くなり、モノクロとなった世界に映し出されたのは、圧倒的な悲壮感…難民家族、国境警備隊そして人権活動家それぞれの視点で描かれる難民問題の闇…

ベラルーシ、ポーランド双方の国境警備隊から理不尽な暴力を受け、双方の国境を行ったり来たりさせられる難民の姿は、これが2021年の話なのかと大きな衝撃を受け、その緊迫感と悲壮感たるや容赦ありません。

ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害を経験したはずのポーランドでの、ある意味ナチス以上の迫害とも言える暴力の数々…ポーランド政府としては隠したかったのでしょうが、アグニエシュカ・ホランド監督は、映画という媒体を使って告発したのだと思います。

今や世界的に問題となっている難民問題…先日、バイデン大統領は、"日本は外国人嫌い"と発言し、物議を呼んでいますが、身近な問題として捉えづらい日本人には、160分と長尺ではありますが、今観なければならない作品であると強く思います。
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