映画業界のほんの一部を切り取ったような作品で、女性が主人公なのでこれを演出した女性監督の体験によるものなのかと思ったら映画業界で働く多くの人たちに取材して作られたそうです。
観終わっていろいろ調べてビックリしたのは、元々はドキュメンタリーから始めた監督だそうで、今作は劇作品デビューなんだそうな。なんでビックリしたかというととてもそんな風には見えなくて、劇映画をみっちり勉強して経験してきたのかなと思わされたからです。それくらい良かった。オフィスという限定された空間を切り取った映像でありながら見せることに長けている作りだと思いました。少なくともわたしの主観では……。
主人公が電話で話したり、いくつかのダイアローグもあることはあるけど、半分くらいはサイレント作品のような作りで、セリフが少なく、まるでどこかの定点カメラのようにあるオフィスの様子を捉えています。あらすじを読まなければ何の会社かわからないけど、それが徐々になにをする会社なのかというのが見えてきます。主人公の背景もだんだんわかるようになる。それは本題ではないけど、主人公はこんな風に働いていますよと、見せてくれます。その間、なにもドラマチックなことは起こらないんだけど観ていて退屈することはなかったです。
その後、ある問題に触れて、主人公はわずかな勇気を振り絞って抵抗を試みるも、目の前に立ちはだかるあまりにも大きなパワーを突きつけられて力なく引き下がるだけでした、っていう映画なんですけど。これをうまくフィクションで作り込んで仕上げたなあと感心しました。俳優たちもうまい人ばかりで、演出された控えめな演技がところどころグサグサと痛々しく刺さってきます。
映画業界を舞台にしたのは性的虐待のワインスタインの事件がキッカケだそうです。監督は多くの人たちに話を聞き、実際にワインスタインの会社で働いていた人にも取材したそうです。多くの人にオススメできる作品ではないですけど、映像が思った以上に良かったというのもあって、わたしには見応えがありました。
