寝木裕和

アンテベラムの寝木裕和のレビュー・感想・評価

アンテベラム(2020年製作の映画)
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Netflix制作の作品なのだけれど、程なくして数館ではあったが日本では劇場公開もされたので、その時に鑑賞。

そして今回サブスクにて再鑑賞。

初めて観た時もやはり中盤の例の「スマホが鳴る瞬間」にすこぶる驚いた。

差別問題がとても大きな核になっているのだが、そんなテーマ性もさることながら、一つ一つの物語の展開にずっと目が離せない、ストーリーテリング力のある作品だ。

主人公ヴェロニカが将軍らを「小屋」に押し込め火を放つ時に将軍が彼女に言う台詞にゾッとした。
「我々は無数にいる。
我々だけを滅しても、次の我々が出てくる。」
… これ、世界の至るところで現実に言えることじゃないだろうか…。

その主人公ヴェロニカを、あのデイビッド・バーンの『アメリカン・ユートピア』の重要なシーンでカバーされた「Hell You Talmbout 」の作者、ジャネール・モネイが演じているのも意味深い。
あの曲は人種的暴力によって命を落としたアフリカ系アメリカ人の名前を叫び続けるもので、そんな歌を作った彼女だからこその真に迫った演技が、この作品を深淵なものに仕上げることに貢献している。

ラストの、馬上で雄叫びを上げながら南北戦争のテーマパークから飛び出してくるシーンには、歴史的に人種差別を受けてきた全ての者たちの断末魔にも思え、熱いものが胸に込み上げてきた。
寝木裕和

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