オーウェン

仔鹿物語のオーウェンのレビュー・感想・評価

仔鹿物語(1946年製作の映画)
4.2
この映画は、フロリダ北部の開拓地で暮らす一家の厳しい生活を描いたヒューマン・ドラマで、ひとりの少年の成長の物語。

原作はピュリッツァー賞を受賞した小説で、11歳のジョディを演じたクロード・ジャーマン・Jrは、この演技でアカデミー賞特別賞を受賞。

ジョディは自然と動物が大好きな少年で、どうしても自分で動物を飼いたいと思っているが、両親(グレゴリー・ペック、ジェーン・ワイマン)は、自分たちが食べるだけで精一杯だと許してくれない。

だが-------。
そして、少年は大人になる。生きること、現実の厳しさ、失うことの悲しみを知って----。

それにしても、少年の母親はちょっと厳しすぎるのではないだろうか。
夫と息子の全てを管理し、劇中、ほとんど笑わない。

実は、彼女はかつて赤ん坊を死産していて、それ以来、情緒不安定なところがあるのだが、貧しさと生活の苦労でいつも尖っている彼女を見ていると、優しい夫や動物好きの少年に、少し同情したくなってきます。

この一家の日常に、隣人一家との話や町でのエピソードなどが入って進行するこの映画のメインは、やはり少年が両親に頼み込んで、やっと飼うことが許された仔鹿との話だろう。

父が森でガラガラ蛇に噛まれ、その応急処置のために殺した母鹿の子供。
実は、鹿の肝が特効薬だったのだ。
友だちのいない少年にとって、フラッグと名付けたこの仔鹿は、唯一の友だちで、少年は野や森、川を仔鹿と一緒に走り回る。

これらのシーンは観ているだけで心が晴れ晴れしてくる美しい場面だが、動物の成長は早い。
ひと回り大きくなった仔鹿は、一家の生活の糧であるタバコの苗やトウモロコシの芽を次々と食べてしまうのだ。

少年はそれを防ぐため、古材で高い柵を作ろうとし、この場面では、仔鹿を嫌っているはずの母親も少年を手伝うんですね。
けれども-------。

冒頭近くでの家畜を襲った熊に、二匹の猟犬が飛びかかるシーンは、どうやって撮ったのかと思うほど実にリアルで、開拓一家の綺麗ごとではない生きるための戦いも生々しく、それを体験することで少年は成長していくんですね。
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