やべべっち

すばらしき世界のやべべっちのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

本当に素晴らしき映画だった。役所広司さんの演技が素晴らし過ぎて。最近思うのは日本映画も捨てたもんじゃないなって思う。
Perfect daysを撮ったヴィムヴェンダースはきっとこの映画を絶対見たのだろう。それほどこの映画はPerfect daysと類似点が多い。大ヒットしたPerfect daysはこの映画のオマージュと言える。

この映画の主人公の三上はPerfect daysの平山と真逆の性格の持ち主だ。平山が4種ならこの三上は7種だ。義理人情に厚く、かっと頭に上りやすく馬鹿正直にしか生きられない。7種って自分にかけられる施しを拒否する傾向にある。

13年ぶりに出所した三上は10犯。その三上を温かく迎えてくれる身元引受人はいるものの世間の風当たりはきつい。この映画を観ながら朝倉未来の「ブレイキングダウン」を思い出していた。こんなにも前科がつく事が生きづらいなら確かにブレイキングダウンも価値があるのかも、と思えてきた。敗者復活戦が少ない世界は落ちぶれると一発逆転を考えがちだ。

女性キャストの存在感が凄い。
まず身元引受人の妻の梶芽衣子。
「三上さんは真っ直ぐ真面目過ぎるんよ。うちらみたいに適当に生きんと」
そうなんよねー。一意専心、万事徹底など日本はtoo controlな言葉が多い。けど確かに人生は適当な方が功を奏する事が多い。力を抜いて力を出すというのもあるしね。
そして長澤まさみ。
ちょっとしか出てないけど三上の喧嘩の場面でカメラを持って逃げ出した津乃田に「撮って伝えるか、止めるかどっちかにしろ」と怒鳴るシーンとか「レールの上に乗っている私達もちっとも幸せじゃない、だからレールを外れた人達を許さない」という言葉は芯を食いすぎていてグサッと来た。

世の中を0か100かで見れないというのは彼の純粋性とも言える。これは小さな子供なら誰もが持っている純真性だ。だが0か100かでしか観れないというのは未成熟とも言える。最後のシーンは辛かったが救いはある。死ぬ時は誰もが1人ぼっちだけどそれでも誰がが思ってくれる人生の方が良い。どんなに生き辛くともこの世は素晴らしき世界なのだから。