クリーム

アトランティスのクリームのレビュー・感想・評価

アトランティス(2019年製作の映画)
3.7
ウクライナの未来を予言したかのような映画でした。恐らく、現在ウクライナとロシアの戦争が終結した後、同じ様な自体になるのではないかと思うと、戦後も含めて戦争なのだなと痛感しました。全体的にセリフが少なく静かなのが、戦争の重みを表現していて、息苦しくなる映画だった。冒頭とラストの赤外線サーマルナイトビジョンと言うものを使った演出が、美しく、物悲しく、印象的でした(ジャケの写真)。
2025年ロシアとの戦争終結から1年後のウクライナで、全てを失いPTSDに悩む元兵士と、戦死者の遺体を掘り起こして身元確認をするボランティア活動に従事する女性。破壊された街と、そこで生きる人々の姿を描いた2019年製作のウクライナの戦争ドラマ。
出演者は退役軍人や兵士、ボランティアの人達で、セルヒーを演じたアンドリー·リマルーカは実際にドンバス戦争を経験している人物だそうです。




ネタバレ↓




国と国民を守るために尽くしてきたのに『お前たちに守ってくれだなんて頼んでない』『化け物め』と陰口を叩かれるイヴァンとセルヒー。戦後って、そんなものなのだろうか?2人が気の毒でならなかった。そんな中、イヴァンが鉄を溶かしている中に飛び込み自殺するシーンは、衝撃的でした。自殺するにしても方法があると思うけど、それだけ病んでいたのだろう。イヴァンを失い、職場も失った、セルヒーだが、生きていくために必死に働くしか無かった。彼の空虚な日々をセリフを殆んど入れず映す事で、表現していて、とても痛々しかった。
そして、カティアに出会った事で、日々が変わり始めました。 カティアは衛生兵として従事していた際、助かる命と助からない命の選別をし、後者をその場に置き去りにするしかなかった事を悔やみ、戦場から1人でも多くの遺体を持ち帰ろうとしていた。
セルヒーが「よそへ行っても無駄だ。もう普通には戻れない」とカティアに話すシーンは、説得力がありました。カティアは彼の気持ちが痛い程解るのだろう。
戦争で傷付き、それでも戦場から離れられないセルヒーとカティア。そんな2人だからこそ、心を通わせる事が出来たのだと思います。
悲しく切ないが、温もりを感じ伝え合う2人が健気で素敵だった。
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