クリーム

渇いた鉢のクリームのレビュー・感想・評価

渇いた鉢(2022年製作の映画)
3.8
ずっと暗くて、苦しい作品。ある日突然、愛する家族を犯罪や悪意によって失ったら、人はどうなるのだろう?そう思って観始めましたが、それは永遠に続く地獄の日々でしか無かった。頭の中でそうなるだろうな?を映像化されてしまった。申し訳ないけど知らない役者さんばかりだったのだが、それがまたリアリティを演出していた。考えさせられます。

暗い部屋で独りPCの検索画面と対峙する男·松村大地は、3年前、幼い娘を殺害され、執拗にマイクやカメラを向けるマスコミや野次馬に疲れ、妻は自殺してしまった。松村は妻子を守れなかった自分に対する自責の念に苛まれ、やりきれない思いを抱えていた。



ネタバレ↓



娘スミレを奪った犯人は捕まっておらず、毎日、無気力で仕事を淡々とこなす。新人が入ろうが同僚が煩かろうが、気にしない。そんな職場と暗く、ゴミだらけの部屋の往復。娘と妻のお骨だけは綺麗に飾っていて、娘が育てていた、今はただの土だけになった鉢に毎日、水をやる。
そして、たまにネットで検索した犯人らしき人物の実家を見に行ったり、同じく娘が被害にあった男の家を訪問し、2人にしか解らない気持ちを共有し合う。
その男は、犯人の母を「あんな奴を育てた奴がのうのうと生きているのが許せない」とその母の家を放火して、逮捕されます。男の妻は、あなたのせいで夫は犯罪者になってしまった。と恨み事を言うもある意味感謝もしていると言う。
スミレを殺した犯人が逮捕され、松村は首を吊ったり、電車に飛び込もうとするが上手く行かず、家族の幻想を見る。
これからも彼の人生は続くのだ。

生きながら死んでいる様な松村の心が見るに耐えない程痛々しい。家族の幻想を観たり、土だけの鉢に水をやる姿に胸が詰まった。池袋暴走事故の被害者松永さんが、家族の為に戦ったニュースは、度々目にしたが、松永さんの強さは、改めて凄いと思いました。
普通の人間は、この主人公の様に抜け殻になると思う。地味で暗い作品だが、考えさせられました。勿論、答えなんて出ませんが…。
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