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ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

5.0
人工知能を搭載したロシアの潜水艦《セヴァストーポリ》が、最新ステルス機能を基にした《デッドレコニング(推測航法)》の試験運航中に沈没。事故の原因が《自我を持った自己学習する人工知能の暴走》であることを突き止めた合衆国は、この《エンティティ》を支配したものこそが世界の覇権を握ることができると確信。IMFエージェントのEthan Hunt(Tom Cruise)へ《エンティティ》を制する《鍵》を入手せよとの司令が下る。


≫大人気スパイ映画『Mission:Impossible』待望のシリーズ最新作が公開された。前作から更に危険度が増した迫力のアクション超大作を『その夏』ちゃんと鑑賞せよ。

ーなお、このメッセージは五秒後に自動的に消滅する。(〜♪)


◆ 1st Mission.
≫ 二対の鍵を入手せよ!

回を重ねる毎にアクションの迫力と危険度が増していく『Mission:Impossible』の最新作。シリーズ一作目から製作に携わってきた主演Tom Cruiseの尽きることなき探究心と向上心が、七作目である今作も素晴らしい傑作へと昇華させています。

五作目『Logue Nation』から監督を務めたChristopher McQuarrieが今回も続投。本シリーズのみならず『Top Gun:Maverick』でもT.Cruiseとタッグを組んだ同監督は、殊アクションにおいてT.Cruiseと非常に相性が良い様に思えます。二人の想像が相乗効果を生み、素晴らしい創造に繋がっていると感じました。

シリーズ作品で初の二部構成が取られており、そのためプロットの進行はやや遅々としているものの、素晴らしいアクションと続編に対する伏線(だと信じている)のワクワク感はかつて無いものでした。本シリーズ、は少し物語のテンポが遅くなった方が「わかりやすい」のだという気さえします。


◆ 2nd Mission.
≫鍵を持つ美女を追え!

今作の最終的な着地点は二対を組み合わせて十字架状にすることで意味を成す《エンティティの鍵》を入手すること。Ethanたちはこの鍵を「どこで」「どのように」使用すればいいのか知らされていないため、上層部にバレずに使用用途と使用方法を把握すべく各国を奔走します。Ethanにとっては《上からの命令》よりも《世界の平和》が大事。格好よすぎるぜ。

︎︎︎︎︎︎☑︎ イエメン国境付近の砂漠地帯
︎︎︎︎︎︎☑︎ アラブ首長国連邦のハブ空港
︎︎︎︎︎︎☑︎ イタリアの首都ローマ中心部
︎︎︎︎︎︎☑︎ 怪しげな夜の水の都ヴェニス

EthanらIMFメンバーと、敵対するテロリスト。そして例によってEthanを追いかけるCIAのエージェント。三つ巴の駆け引きは相変わらず見応えがあります。銃撃戦、近接戦闘、カーチェイス、爆弾解除、心理戦、ハッキング。本シリーズの手に汗にぎる要素は全てが揃っていました。

今作でヴィランのテロリスト以上に厄介な存在だったのか《エンティティ》と呼ばれる人工知能。生成AIの法規制について議論が交わされる昨今のトレンドを反映したような《ディープフェイク》にはヒヤリとしました。頼れるハッカーLuther Stickell(Ving Rhames)によってコミカルな描かれ方をしていましたが、CIAによる《公共空間での顔認証捜査》も実現すれば恐ろしい。


今作では従来のヒロインIlsa Faust(Rebecca Ferguson)とBenji Dunn(Simon Pegg)に加えて、新たなヒロインGrace(Hayley Atwell)を迎えました。敵か味方か、一筋縄ではいかない彼女が投入された事でプロットがかき乱され、時にスリリングなアクションにコミカルさをプラス(EthanではなくGraceが運転してカーチェイスを繰り広げる 等)しています。

物語後半で訪れる最もシリアスな場面も、Graceを中心に展開されていました。今作のメインテーマは《Ethanの原点》に迫るという事ではないかと考えていますが、その演出もまた彼女によって引き立てられていました。

如何にして《IMFに入る選択をしたのか》という事について。


◆ the Last Mission.
≫ 鍵の正体を暴け!

今作のタイトルとなっている《デッドレコニング》とは《進んだ経路や距離などから、現在地を推測する航法》の事であるようです。Ethanの過去(歩んだ来た道程、選んできた選択肢)が現在のEthanを形作っていることを示唆するようで、とても魅力的なタイトル・テーマであると思います。

記念すべきシリーズ一作目以来の登場となる元IMF長官Eugene Kittridge(Henry Czerny)の登場も、そう考えると意味があるように思えてきます。同じくシリーズ一作目に登場した武器商人のMaxは、前作『Fallout』で彼女の娘であるAllana(Vanessa Kirby)が登場しています。今作でもAllanaが続投していますが、彼女の登場が最終章への伏線であるとするならば、素晴らしく編まれたプロットだと期待値が高まります。(V.Kirbyの見せ場をもっと観たいだけ。)

過去の作品でも世界を脅かす強敵が数多登場しましたが、今作のヒールGabriel(Esai Morales)は過去にEthanとの因縁があるように描かれていたのも気になるポイントでした。


これまでのEthanの軌跡を踏まえて現在に収束していくようなプロットに見合うのが、またしてもシリーズ最高峰のレベルを更新してくるド迫力のアクションシーン。

暴走するオリエント急行へ飛び乗るために断崖絶壁からバイクごと飛び降りるスタントは圧巻の一言。無音+俯瞰の映像は、一瞬、画面に吸い込まれて落下してしまうかのような錯覚を覚えます。

一作目で一番盛り上がったシーンは、勿論ラストの高速鉄道での一幕。心理戦とアクションを同時並行させた見応えのあるシーンでした。今作の《オリエント急行》でのシークエンスは、これを思い起こさせるだけではなく何十倍にもパワーアップさせていました。

バイクごと飛び降りる圧巻の映像で観ているこちらを大満足させた後にもまだ見せ場を残しているサプライズ。崩落した鉄道橋から勢い余ってこぼれ落ちていく急行の前方車両から必死で後方車両へと逃げる(飛び移る)EthanとGrace。そして意外な人物からのラストメッセージ。


物語は二時間半かけて(冒頭で既に我々には提示されていた)ようやく鍵を手に入れただけ。それにも関わらず、大いに心を奪われてしまいました。


ーThis tape will self destruct in 5sec.