メシと映画のK佐藤

バーナデット ママは行方不明のメシと映画のK佐藤のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

観た後に爽やかな気分になれると共に、元気を貰える良作でした。
今何かに悩んでいる人の背中をポンと一押ししてくれる様な作りになっているので、その様な方には是非観て欲しい作品です。

パンフ掲載の監督を含めた作り手側の弁に依れば、本作は主人公のバーナデットの自分の再発見の物語であり、「社会が定めた道や定義ではなく、人生は自分のやり方で作るもの」であると云う事が本作に込められたメッセージである様です。
これらの弁の通りで、天才若手建築家と評されていたのに突然創作活動を止めてしまい、ある意味死んでいた彼女が改めて自分は何者であるのかに気付き、生き返って行く過程が上手に丁寧に、時折ユーモアを交えて描けていました。
そこが、個人的に本作を良作たらしめている要因であると思います。
前半から中盤にかけてバーナデット側に人間的に問題アリな人物と観ている側に思わせる描写→実は彼女の夫が彼女を想ってした行動が原因で、彼女は建築家を止めてしまったと云う理由の明示→南極基地のデザインと云う目標を見つけ、生き返るラスト…と云う様に、上述のメッセージに沿ったバーナデットの再生の物語としての組立が見事でありました。
本作のオープニングのバーナデットの娘のナレーション内容(時が経つにつれて感動が希薄化すると云う脳の危険回避に基づく機能について)や、学芸会での娘を目にした瞬間にバーナデットが涙した理由(純粋な娘の成長に対する感動もあると思いますが、自分が止めてしまっていた創作活動を娘が行なっていたのを目の当たりにして様々な感情が去来した事も理由であると個人的には考えています。)、本作の劇中曲にもエンディングソングにもなっているシンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム」の歌詞が本作ではバーナデットの家族&バーナデットとバーナデット&長い間見失っていたバーナデット自身と云う二重の意味が込められていた(…と自分は考えています。作り手側が明言していないので、見当違いも甚だしいかもしれませんが…。)事等々。
クリエイティブな活動こそバーナデットの本懐であり、それは何物にも束縛されるべきではない事を表す仕掛けが、所々に施されていたのも見事でした。

他に見事であったのが、バーナデット役のケイト・ブランシェットの演技。
自分を殺していた前半〜中盤にかけてと、自分のやるべき事に気付いた終盤とでは、「本当に同一人物?」と思ってしまう程違って見えるのです。
パンフ掲載のコメントにてケイト様が「南極へ行く前と後では、別人として演じ分けている」と仰っていて、成程と思った次第です。

家族に己がどんな人物であるかを理解して貰い、新たな南極基地をデザインすると云う自分のやるべき事を見つけて、それにバーナデットが邁進して行く…と云う気持ちの良いラストに、冒頭でも述べましたが、自分は非常に元気を貰えたのでありました。