椿本力三郎

劇場の椿本力三郎のレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
4.4
「勝手にふるえてろ」で松岡茉優を天才だと思ったが、
この作品で彼女は天才ではなく怪物であることを確信した。
冒頭の数分でのちょっとしたしぐさ、目線の使い方。
女優としての格が圧倒的に違うことが良くわかる。

主役は山﨑賢人。
もちろん一定以上の輝きやオーラはあるものの、
それは、松岡茉優という太陽の光を得た「月の光」のように思う。

役柄だけでなく、実際、役者としての力量がそうさせている。
山﨑の良さを引き出して、さらに10倍くらい輝かせているのが松岡。

この作品、女性目線で見るか、男性目線で見るかで印象が大きく変わる。色々な意味で「あきらめきれない」男女が、
現実を受け入れ、新たに動き出そうとする。

アートや芸能活動において中途半端な才能や成果が、
結局、自分を苦しめてしまうというメッセージ。

「才能がない」方がいくらか楽だ。
中途半端な場合、自分がしんどいか、周囲をしんどくさせてしまう。

終盤に登場する「急に登場した感のある説明的な会話」や人間関係の設定は、
ただひたすらダラダラ続いていく日常を
映画としてまとめる為に必須の仕掛けであると思う。
男か女か、いずれかに感情移入できていれば、
ラストシーンで涙腺は崩壊するだろう。
いずれにせよ、最近の恋愛系邦画ではトップクラスのクオリティ。