むらむら

ミッドナイト・トラベラーのむらむらのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・トラベラー(2019年製作の映画)
5.0
アフガニスタンから逃れ、難民としてドイツを目指す一家四人のドキュメンタリー。

ハッサン・ファジリは、脱タリバンを図ったタリバン指導者の映像を撮ったことで、タリバンから死刑を宣告される。実際に、この元タリバン指導者は、処刑されており、身の危険を感じた一家は、アフガニスタンを脱出することに。

この作品は、その脱出行の第一日目から始まる。だが、脱出した先のタジキスタンで、一家はいきなり庇護申請を断られ、遠くヨーロッパの果て、ドイツを目指すことに。その距離、5600キロメートル。

一家で世界地図を見ながら

「いま、俺たちがいるのはココ。そして、目指すのは、このドイツ」

ってシーンがあるのだが、世界地図を見ながら旅行計画を練るって、コロンブスの時代じゃないんだから、とても成功するとは思えない。

それでも一家は、なんとかしてドイツを目指す。

凍えそうな寒さの中での、野宿しながらの山越え。国境警備隊の目を盗んでフェンスを掻い潜る。

難民であるハッサン一家が出会う各国の人たち。密航業者に騙されたり、民族主義者に殴られたり……優しい人たちもいるのだが、難民が、とても弱い存在だということを思い知らされる。

結構悲惨な話なのに、希望を失わないハッサン一家。

常にカメラを回すハッサン。
笑顔でハッサンを励ます奥さん。
マイケル・ジャクソンで踊る長女のナルギス。
お転婆な妹・ザフラ。

気付いたら、彼らのことが愛おしくなってる俺(特に妹がかわいい)。

俺、モンティ・パイソンの「always look on the bright side of life」が大好きなんだけど、こんなに悲惨で明日をも知れない身なのに、自転車の練習をして、雪合戦で笑い合うハッサン一家が大好きになってしまった。悲惨な環境だから喧嘩してることもあるんだけど、総じて、映画で描かれる中では、人生をとっても前向きに生きてる。そんな演出なのかもしんないんだけど、難民の人たちも俺たちと同じなんだなー、って当然のことに思い至る。

撮影は全編スマホ。こんな苛烈な状況の中で、常にスマホを充電し、撮影し、保存しているハッサンの執念にも頭が下がる。スマホをXVIDE○とP○rnhubと✕HAMSTER視聴にしか使っていない俺のギガをちょっと分けてあげたくなった。(※一応青少年のために伏せ字)

あと途中、娘(かわいい妹・ザフラ)がいなくなったとき、急にハッサンの語り口が、平野勝之みたいになるんだけど、ドキュメンタリー映像作家って、みんな自分語りしなきゃいけない暗黙のルールでもあるんかな?

それと、音楽めちゃくちゃメタリックで良いんだけど、ホラー映画みたいで不安を煽りすぎ。もっとチャカポコした楽しい音楽も混ぜてほしかった。

ちょっとネタバレになるが、5600kmの旅の途中、約500日を過ぎたところで、セルビアの国境で足止めをくらったまま映画は終わる。(その後の一家に関してはコメント欄で) 

未来が見えないというのに、一家は常に希望を捨てない。

故国を追い出されても頑張るハッサン一家を見て、実家を追い出されて嘆いていた俺も明日から本気だそう、と勇気をもらった気がする。

ちょっとでもアフガン、難民問題に関心のある方にはオススメです。

とりあえず妹は俺の嫁。
むらむら

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