たむたむ

生きるのたむたむのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
3.7
リメイク版公開のタイミングでCSで放送されていた録画を、やっと鑑賞。そして初・黒澤作品。
前日かなりスゴイ作品を観たので、しっとりと。

胃癌で余命僅かだと悟った役所に勤める男・渡辺が、「生きる」ことを見つめ直す姿を通して、官僚主義への皮肉を絡めて描く人間讃歌。

前半は主人公である渡辺が「生きる」意味を探し出すまで、後半は主に回想を軸とした会話劇。

家が4,50万で買える時代。
まず当時の物価に驚きでしたが、今の物価高を考えると少し羨ましく感じたりもします。
物が溢れかえっている現代とは違い、部下の女性が穴の空いたストッキング?を履き続けていたことからも分かる通り、きっとストッキングですら高級品だったのでしょう。

息子夫婦と同居する自宅には居場所がなく、 30年間勤めた役所では書類の山に判を押し時間を潰す日々。今まで自分は、何のために生きてきたのか。。そんな渡辺が「生きがい」を見出すカフェのシーンで、一緒に居合わせた学生たちが高らかに歌う♪”ハッピーバースデー"が耳に残る。あの瞬間、きっと彼は新しい自分に生まれ変わったのだろうと感じました。

ジャケ写にもなっている、雪の中でブランコを漕ぐ本作でも印象的なあのシーン。
♪〜命短し恋せよ乙女〜 穏やかな歌声。
きっと彼は、死の間際に「生」を全う出来たと実感したのだろうなと思ったら、ふいに涙がホロリ。。

胃袋のレントゲン写真による少しユニークな冒頭から始まり、渡辺が憧れた、若さと活気に溢れる生きた証を映し出すラストカットに至るまで、黒澤作品の真髄を垣間見た気がします。
リメイク版と見比べてみたくなりました!

知っていた唯一のキャストは菅井きん。
…ですが、全く見分けが付かずσ(^_^;)
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