フライ

おしえて!ドクター・ルースのフライのレビュー・感想・評価

4.0
日本では余り考えられない性の悩みについて、ラジオやテレビなどで相談にのる、通称ドクタールースと呼ばれる女性のドキュメンタリー。
SEXセラピストとして活動する幅広い仕事内容には衝撃を受けた。

ルース・ウェストハイマーは、アメリカでドクタールースと呼ばれるSEXセラピストで、彼女に相談した人達や、ラジオ、テレビを見聞きして救われた人達は数知れず。90歳を超えた今でも積極的に活動を続けるスーパーウーマン。努力を惜しまずひたすら性について勉強し、SEXセラピストとして天真爛漫に活躍し、偏見を持たず色々な人の相談に乗り、悩める人を助けるが、彼女の過去は壮絶を極めていた。
ドイツの田舎で産まれ、ユダヤ人の両親と祖母に育てられた彼女だが、ナチス台頭に伴い、10歳で父親の機転によりスイスに疎開。両親はホロコーストにより亡くなり、戦後も祖国ドイツには帰らず悲惨なイスラエル建国前のパレスチナの地で命の危機も。そして女性に権利の無い時代、2回の離婚や、言葉の通じないアメリカへの移住、シングルマザーとしての生活など、今の明るい彼女からは微塵も感じさせない、辛い過去を経験していた。
しかし彼女の出会いや経験、努力に無駄なものがない事は、全て観ると良く分かる。

90歳の小柄でキュートなドクタールースからは、想像も出来ない力強い言葉や、行動力には驚いた!
SEXセラピストと言う聞き慣れない言葉に、正直疑問を抱いたが、性についての幅広い相談や活動内容、彼女の素晴らしい心情を聞いて心から納得してしまった。
本作で語られるルースの赤面しそうな性についての話を、真剣に且つ真摯に、明るく笑いを交えながら話す姿と、素敵な言葉の数々に、自分の中にある偏見と言う壁を取り払ってくれそうな力強さと包容力を感じた。当然それは彼女の努力や、積み重ねて来た人生経験があってこそなのだと言う事は、本作を見れば一目瞭然。
日本は世界トップクラスの性産業国家などと揶揄されながら、性教育や性病、避妊など個々の知識の低さや、心のケアがなされていないだけに、彼女の様な人物の必要性を多分に感じてしまった。

本作でドクタールースから学べる所は、性に関してだけではなく、親として、人としてなど幅広く色々と心にささってきただけに、とても見応えを感じた。こう言う人と出会える事は、ある意味人生に花を添え糧になるのだろうなと思えた。
彼女の過去を伝えるアニメーションは、とても心が痛んだが、それ以上に今の彼女を見るだけで、とても元気を貰えたドキュメンタリーだった。
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