フライ

クロール ー凶暴領域ーのフライのレビュー・感想・評価

クロール ー凶暴領域ー(2019年製作の映画)
4.0
アニマルパニック系作品としては、ここまで緊張感を継続して楽しめる作品は、近年余り記憶に無いだけに、ある意味新鮮で楽しめた。何よりワニの特性をしっかりと掴み活かして作られているので、リアルで面白かった。

カヤ・スコデラリオが演じるヘイリーは、幼い時、父親から徹底して水泳を教え込まれ'頂点捕食者'だと言い聞かせられ育てられた。大学に入り水泳で奨学金を貰える程実力のある選手になってはいたが、学内のリレーで負けるなど限界を感じていた。
そんな時、水泳の練習が終わり姉のベスからの電話で、父親が電話に出ない事やハリケーンが近づいている事を聞く。父親とは、自立したい事で喧嘩をし、しばらく連絡していなかったが、本心では父親を愛していたので、危険だからとベスの反対にあいながらも家に行く事に。
途中、姉の元カレの警察官からハリケーンのせいで通行止めだと言われるが、Uターンをする振りをして強引に家に向かう。しかし家に父親はおらず愛犬のシュガーが1匹残されていた。家の状況などから売りに出している実家に居ると判断し、シュガーと共に車で向かうのだが、近くにはワニのいる湖が。
実家に着くと父親の車は有るが、父親はおらず途方に暮れていると、シュガーが床下の入口を吠えていたので、ヘイリーはスマホのライトを頼りに床下に入って行く。するとそこには、バリー・ペッパーが演じる父親のデイブが傷だらけで気を失っていた。ヘイリーは必死に狭い床下を、重症の父親をひきづりながら出口に向かうが、突然大きなワニが襲って来た為、奥へと逃げるのだが…

ワニを使ったアニマルパニックと、ハリケーンと床下の閉鎖空間を利用したシュチュエーションスリラーを上手く組み合わせた中々秀逸な作品だが、兎に角ワニが出現してからの1時間以上、緊張感を継続させる演出の面白さに、肩凝りで頭痛がおきそうだった。更に自分の苦手な痛々しいシーンの連続で、終始恐怖心を煽ってくれていたので一層楽しめた。特に父親のボロ雑巾並のやられ方は、もう許してあげてと思いたくなるくらい悲惨な状況に、終盤'絶対死ぬって'と突っ込まずにはいられなかった。更にまさかのヘイリー迄ズタボロになる展開には驚きも。
娘ヘイリーと父親デイブが、作品の9割を占めているだけに、2人のキャスティングが大切だが、父親役のバリー・ペッパーは年齢を重ね、渋い演技に安定の素晴らしさを感じたが、なんと言ってもヘイリー役のカヤ・スコデラリオは最高だった。ワニにも負けない気の強い演技は、容姿からも感じられただけに、本作にはピッタリだと思えたし、気の強い父娘の家族愛の展開は、この手の作品にありがちな臭さや嫌味を感じなかったので、それなりに感情移入出来たのは良かった。
アニマルパニックや怪物系の作品で犬が出て来る作品は、かなりの割合で食べられるのがセオリーだが、本作は変に出しゃばった演出もせず、最後までシンプルに生き残っていた事に作品としての好感を感じたし、真摯に製作されている事まで感じられた。

最近のアニマルパニック系映画は、B級作品が多く殆ど鑑賞しなくなったが、本作は久しぶりにのめり込んで楽しめる作品に思えたし、シュチュエーションスリラーとしての面白さも有るので興味がある人は是非。ただグロいシーンがかなり有るので、苦手な人は注意が必要かと。
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