白雨

燃ゆる女の肖像の白雨のレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.5
少ない言葉にとても繊細で濃密な感情が託されているようで、完全にその感情を理解できているわけでは無いはずなのに不思議と心を揺さぶられる作品でした。
特に、女優さんの息遣いが印象的です。観ているだけでも一緒に呼吸が早くなってしまったくらい。

波風や炎の音と、キャンバスを木炭や筆が擦っていく音、女性たちの靴音。大自然の中で過ごすごく小さな存在として、そこにいる人々の結びつきが引き立っている感じもとても素敵でした。

詩人としてのオルフェが、妻と過ごす日常ではなく一瞬の思い出を選んだ、というような台詞が心に残っています。それから、観察することは一方的なものではなくて、双方に行われているものだということ。それが具体的にどんなことを意味しているのかまでは分からないのですが、何か深い意味があるような気がしました。

時代や登場人物たちの立場、変化のタイミング、ちょっとした仕草。色んな方向から見てみたら、単なる愛では表せないくらいの様々なものが表現されているのでしょう。1度目なのでただただ映像の美しさと音の繊細さに惹き付けられるばかりでしたが、細かい要素に気を配って鑑賞してみたら、もっと楽しいのではないかとも思います。機会があれば、また観たい……。
白雨

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