時間がとてつもなくゆっくりと流れていくように感じるほど、人の営みが自然に溶け込んでいる。冷たくて透明で、素朴な寂しさに満ちた雰囲気がとても印象に残った。
悲しいことやつらいことがあった時に、それを思いきり吐き出したり誰かと共有したりできるといいけれど、自分にはそんな資格は無いんだと思ってしまうと、感情のやり場を失って、過去のトラウマに帰ることも、折り合いをつけて前に進むこともできなくなる。
それぞれが処理しきれないくらいに大きくて複雑な感情を抱えているはずなのに、話は淡々と進んでいく。だからと言ってさらっと観られるわけではなくて、むしろ堰き止められて沈んでいくような重々しさ、人とかかわっていても埋められない孤独感がわっと押し寄せてくるような感じがして、心ずっしりにくる作品だった。
