椿本力三郎

はちどりの椿本力三郎のレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.4
何かに頼っていないとそのまま心が折れてしまいそうな少女が主人公。

それは、自らの家族ではなく(特に父親や兄ではなく)、
友人や恋人や後輩でもない。
やっと見つかった「頼りになる対象」も脆く消えていく。

彼女に降りかかった「顔に傷が残るかもしれない手術」は
自分自身すら頼りにできないということの象徴かもしれない。

家父長制、学歴社会、職業差別等、
韓国社会の息苦しさを1994年の「日常」を通して静かに描いていく。
ポン・ジュノ作品にも通じるものがあるが、
韓国映画の奥ゆかしさを知った。

暴力や罵倒といった、直接的な厳しさだけでなく、
人間関係における空気感の残酷な変化を会話のトーンや視線で表現。
重く迫ってくる余韻が素晴らしい。