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パラサイト 半地下の家族の本好きなおじぃのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.2
建物の、薄暗い半地下で暮らすキム家の4人。
大学受験に失敗した息子のギウは、友人のミニョクから留学に行く間の家庭教師の代行を頼まれる。そこでは報酬がかなり多いと聞き、思わずやると言ってしまう。
パク家に家庭教師に向かったギウ。そこでその一家の娘・ダヘの家庭教師として勤めることに決まる。ダヘはギウに一瞬にして惚れてしまう。
やんちゃなその一家の息子・ダソンにパク夫人が手を焼いていることを知る。ギウは、妹のギジョンを偽名でダソンの家庭教師として潜り込ませることに成功する。
キム一家は、一家まるごとパク家から給与をもらおうと、父・ギテク、母・ギュンスクもパク家に潜り込めないか画策する。
パク夫婦をうまくだまくらかすキム一家だったが、その家にはある秘密があり…

半地下は日本ではなじみがないが、韓国ではどうやらそう珍しいことではないようで、この映画ではキム一家が半地下、パク一家が高級住宅街(団地?高台?)に住んでいることから対照的に描かれている。
半地下は、1970年代以降、韓国政府が北朝鮮からのテロ攻撃が行われた時期に、防空壕のような意味合いで作るように命じ、その後それが止み住宅危機が起こったときに合法的な住居として認めざるを得なかったのだという。
住みにくい場所であり日も当たらない、しかし家賃が安いのでそこに貧しい家庭が住むことができる。キム一家もそうした家族の一つだ。

悪い言い方をすれば、キム一家はパク一家を「食い物にする」。しかしそれは、パク一家には全くわからない・ばれない形で、しかも十二分な信頼を得ているというのがポイントだ。
あるときパク一家が泊りがけでキャンプに行くことになったとき、最初のクライマックスを迎える。約1時間くらいのところ。
ずっとハラハラで、キム一家はパク一家の家で宴会をするが、一家のピンチがある来訪者によってもたらされる。
もたらされる、というよりは実は内包していた問題であったがキム一家もパク一家も気づくはずのない問題であり、そしてそれは、韓国社会に強烈な格差があり、それは下に行けばいくほど、もっとひどい人がいるのだ、ということを思い知らされるだけの結果。
キム一家はその問題に絶望するが、どのように立ち向かい、回避しよう尾するのか。そこから立て続けに息をのむ展開になる。
日本語吹替よりも、字幕でじっと画面に見入った方が、没入できる。そうすることで彼らの心情がぐいぐい向かってくるのはこの映画だけではないが、それぞれの一言一句・一挙手一投足に目が離せない。全く退屈しない。