おいなり

デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆のおいなりのレビュー・感想・評価

4.0
「太一、おっきくなったね」



「tri」という、一部声優以外ほぼ誰も旧作からスタッフを引き継がない、粗悪な二次創作でファンとの信頼関係をズタボロに引き裂いた東映。
散々批判された後で間髪入れずにまた新作を作ると言う節操の無さに、マジでファンを金ヅルとしてしか見てないんじゃないかという疑念は晴れないが、一応反省はしたのか、キャラデザも中鶴さんに戻って、旧作プロデューサーの関弘美をスーパーバイザーとして起用。脚本もシリーズに長く関わった名脚本家、ルージュ・ドゥ・ルーン……もとい大和屋暁に書かせて、遅すぎる軌道修正。



triのおかげで期待値が最底辺まで下がってたのと、本作も公開前に内部で一悶着あったりとか、あーまたダメだなこりゃという気持ちだったのもあって、観てみたら正直めちゃくちゃ良かった。本作が100点の回答というわけではないんだけど、テレビシリーズの続きとして、観たかったものをきちんと見せてくれるという意味で、非常に正しい「懐古」作品。

triの悪かった部分・ダメだった部分はわりと改善できている。素人レベルだった演出もちゃんとプロの仕事になっているし、作画も良好。登場キャラを絞ることで、しっかりひとつのお話として完結させることを優先していて、それでいて画面外のキャラを決して蔑ろにはしない。ほんとこの90分だけで9時間あったtriの数千倍はよく出来てる。

何より、人間の「成長」を、その痛みも含めて肯定的に描いているところに、今、あえて、あの時終わった物語を語り直す「意義」が感じられて、後半はかなり心動かされた。
選ばれし子どもたちが、子どもではなくなっていくことで、失われてしまうもの。この描き方は、02での決着とは相入れない部分もあるけれど、僕は無印組の物語の続きとして、これは完全に肯定したい。
彼らが大人になる第一歩、あの最終回に繋がる新たなはじまりの物語として、ようやく「これから」のデジモンアドベンチャーに期待できるスタートラインだなと感じた。

ウォーゲームへの目配せオマージュ、超いいね!まだ正気だった頃の細田守演出。



……というか、本当にtriさえなければ、もっと感動できたのにな。
仲間ヅラで出てきた新キャラが実は過去に◯◯で黒幕で……っていう、ついこないだやったのと同じ話をよくそんなドヤ顔で出せるなとはさすがに思ったけど、もしかしたら監督・脚本含めて新規スタッフは誰もtri見ずに作ったのかもしれん。まぁtriの監督も旧作見てないし全然それはいいんだけど。

triなんてものがなくて、デジモンアドベンチャーが20年ぶりに復活します!でいきなりこの作品を見せてくれていたら、どれほど良かっただろうと今でも思う。
このままtriが無かったことになったらどれほど良いだろう……。
triが好きで好きで仕方ない、という人がもしいたら本当に申し訳ないけれど、古参ファンの厄介おじさんとして、あの作品についてはなに一つ受け入れられる部分がない。こき下ろすためだけにわざわざレビューを書きたくもないので、ここで愚痴っておきます。



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