萌える闘魂

草原の輝きの萌える闘魂のレビュー・感想・評価

草原の輝き(1961年製作の映画)
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ナタリー・ウッドのナタリー・ウッドによるナタリー・ウッドのための作品である。ナタリー・ウッドだけを観ていればそれで良い。勿論『ウエストサイド物語』『理由なき反抗』もあるが、完全主人公としての役柄ではこれ。これこそ映画史上のベストワンと断言しても一向に構わない。映画は何よりも先ず「青春」を描かなければならない。そして20世紀最強の女優である彼女の主演とあれば、必然的にこれ以上の映画は無い物ねだりとなる。「青春」とは映画にとって最大のテーマである。『イントレランス』にも『サンライズ』にも『ガートルード』にも『ドクトルジバゴ』にも『市民ケーン』にも『インドへの道』にも『草の上の昼食』にも青春はある。しかしこの作品の到達は彼女が自ら「青春」の化身となることで、観る者にその全てを委ねる点にある。カザンの演出を遠く離れて彼女を通して観客が観るものは解放された「青春」そのものの姿に他ならない。授業中、ワーズワースの詩を朗読する一幕は彼女の狼狽ぶりに映画も動揺する。最終盤浄化されたかのように思える世界の中で、彼女のクローズアップとなるが、その眼差しは、映画そのものの観客に向けられた眼差しなのかもしれない。純白のワンピースはスクリーンの白に重なり合いその先に何があるかをしなやかに投げ掛ける。彼女の作品では『ジプシー』も忘れ難い。