萌える闘魂

ファウストの萌える闘魂のレビュー・感想・評価

ファウスト(1926年製作の映画)
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原作が有ろうが無かろうがこれはムルナウ監督のファウストである。ジャンヌ・ダルクの様にうら若き女性が焚刑になったりもする理不尽な場面もあるが全編が喜劇だとすれば、これはこれで倒錯的なムルナウ監督の映画美学の一つの到達であろう。制作費を潤沢に使用しドイツ表現主義時代の演出技法と当時最先端の特殊撮影で描く人間喜劇。物語性の破綻など微塵も恐れないムルナウ監督の生み出す趣味的世界を魚眼レンズのような世界観と映画感性で切り取ってみせる贅沢な絵作りに終始圧倒され当方にくれたりもする。映画は観て楽しむ物である。この単純な行為に気づかせてくれる貴重な作品である。ムルナウ監督の演技指導もあるのかもしれないが、これだけ役者陣が自らの役を楽しく演じている映画を私は知らない。